日独経済日記

日独間の架け橋となることを目指しています

20220521 ドイツ政局アップデート(ベアボック人気急上昇)

ドイツ公共第二TV放送(ZDF)が毎月(1-2回)実施している世論調査「Politbarometer」が本日アップデートされましたので、その中の政治家人気ランキング(トップ10)と、政党別支持率をご紹介します。

Forschungsgruppe Wahlen > Aktuelles > Politbarometer

 

  

 

  • トップは引き続きGreenの元共同党首二人(ハーベック経済相とベアボック外相)。ベアボック外相の人気が大きく上昇しトップに肉薄。
  • ウクライナ危機対応でGreenの二人が毅然とした対応で信頼感を高めているのに対し、ショルツ首相はSPDの過去の親ロシア政策に引きずられて中途半端/後手後手という印象になっている。結構差がついてしまったので当面逆転は難しそう。
  • FDPのリントナー財務相も経済界の期待に応えるような存在感を示せず、ジワジワ評価を下げている。
  • メルツCDU党首は地方選連勝でやや復活。但し、政権内主要閣僚にはまだまだ見劣り。
  • 10位のラムブレヒト防相は、息子を軍の移送機に同行させる公私混同(コストは自己負担)で叩かれ、評価を下げている。

 

政党別支持率では、CDUとGreenが支持を伸ばす一方、SPDとFDPは評価を下げており、上記と整合的な動きとなっています。

 

 

5月に実施された2つの州選挙では二つともCDUが大勝しましたが、上記Wahlen以外の世論調査を含む全独レベルの政党別支持率を見ても、今月に入ってからCDU/CSUSPDに対するリードが顕著(4~8%)になっています。SPDはGreenにも肉薄されています。

 


Wahlumfragen zur Bundestagswahl – Sonntagsfrage (Wahlumfrage, Umfragen) (wahlrecht.de)



20220520 ドイツコロナアップデート(長期的視点)

毎夕木曜夕方にドイツ国立感染研究所(RKI)から発表されている直近週報をチェックしておきます。

https://www.rki.de/DE/Content/InfAZ/N/Neuartiges_Coronavirus/Situationsberichte/Wochenbericht/Wochenbericht_2022-05-19.pdf?__blob=publicationFile

 

オミクロンは着実に終息に向かっているのですが、新規感染者数はまだまだかなり高い状態です。欧州他国比でもアンダーパフォームしています(ドイツだけ真面目に検査・報告をつづけているという可能性もありますが)。


どの年齢層においても、かなり高い感染率(人口10万人当たり一週間の新規感染者数で計測)に留まっています。

(縦軸:年齢層、横軸:時間、色:感染率)

但し、重症(入院)患者数はかなり減っており、コロナ前より低いくらいに留まっています。

 

その結果、医療キャパ(入院病床)は全く問題なく余裕のある状態となっています。

 

コロナによる死者数もかなり抑え込めるようになってきました。

 

最近、PCR検査件数は激減(2百万件超⇒80万件/週)し、陽性比率は約4割となっています。PCR検査会場には心当たりのある人が確認に来ていることが多いので、日本への帰国のために検査を受けるような場合には、検査会場で周りの人から移されないよう厳重な注意が必要と思います。

ちなみに検査のキャパシティは3百万件/週あるので、現在の稼働率は1/4程度です。

 

ワクチン接種は最近ほとんど進んでおらず、打ちたい人はほぼ打ち尽くした状況となっています。次の秋冬に向けて、オミクロン用のワクチンが開発できれば、すべての国民に4回目のブースターが提供される見込みです。

 

足元の感染はほぼすべてがオミクロンBA2ですが、最近BA5がやや増えてきています。但し、変異種の重症化/大流行のリスクはほぼないと評価されています。

 

以下は本日のRKI日報(5/20)からの抜粋(データ)です。

 

再生産数(赤線)は最近安定的に1.0を下回っており、(改善ペースはやや遅いものの)今後も新規感染者数の減少継続が期待できます。

州毎に見ても、むらなく全体として沈静化に向かっています。

 

今年の夏は、久しぶりになかなかノーマルなものになってくれるのではないかと期待しています。

20220519 自然災害の予兆管理

昔は殆どなかったのですが、近年は大きな被害の出る暴風雨がドイツでも年数回発生しています。昨年はドイツ西部で大洪水が発生しましたが、こういった自然災害の予兆を察知することは、リスク管理上非常に重要と考えています。

 

その具体的な方法としては、例えばMicrosoft Start の天気予報画面に出る赤い三角印(警報)が便利です。



クリックすると、どんな危険が迫っているかがわかります(今回は激しい嵐)。


これを見て身構えつつ在宅勤務をしていたのですが、今日の午後3時頃から、デュッセルドルフでもこんな感じで窓を開けていられないほどの暴風雨が30分ほど続きました。

 


明日(5/20)の午後はもっと強い暴風雨がもう一度襲ってくるということなので、しっかり備えておくつもりです。

 

オフィスにいる間に暴風雨が始まってしまったような場合に、家に帰るタイミングを測るにはこちらのサイトを見ておくとよいと思います。雨や雲の迫り具合が判ります。

Artemps, Hauts-de-France, Frankreich Wetterkarte | Microsoft Weather (msn.com)

 

なお、大変ありがたいことに、在留届を出している総領事館からはこのような警告メールがタイムリーに届きますので、よく読んで指示に従うことをお勧めします。

【安全情報】暴風雨についての注意喚起(5月19日)
●ドイツ気象庁の発表等によると、5月19日(木)午後から、NRW州を含むドイツ西部で突風を伴う雷雨となる可能性が高く、現在、暴風雨警報が発令されています(20日(金)にはドイツ中部に移動する見込みだが、時速120キロメートルの強風予報あり。)。
●落雷の危険及び暴風による倒木などの危険性があることから、川や森林等に近づかないようご注意ください。
悪天候や倒木の影響で交通機関の運行にも影響が出る可能性があることから、時間に余裕をもって計画的に行動することを心掛けてください。また、下記関係機関ホームページや報道等から最新の情報を入手し、状況に応じて外出を控えるなど、身の安全確保を第一に行動してください。
●万一災害に巻き込まれた場合は、現地当局が発表する警報・指示等に従って安全確保に努めるとともに、当館または最寄りの日本国大使館・総領事館に連絡してください。

(参考情報)
■ドイツ気象庁(DWD)
https://www.dwd.de/DE/wetter/warnungen/warnWetter_node.html
■ドイツ気象庁(DWD)ツイッター
 https://twitter.com/dwd_presse
ドイツ国民保護・災害支援庁ウェブサイト
 https://warnung.bund.de/meldungen
■独政府の災害警告アプリ(NINA)
◯NINA(グーグル)
https://play.google.com/store/apps/details?id=de.materna.bbk.mobile.app&hl=en_US&gl=US
◯NINA(アップル)
https://apps.apple.com/de/app/nina/id949360949?l=en

■「安全の手引き」(ドイツ)
https://www.de.emb-japan.go.jp/files/100167010.pdf
■「たびレジ」(3か月未満の渡航の方)/ 在留届(3か月以上滞在される方)
https://www.ezairyu.mofa.go.jp/index.html
スマートフォン用 海外安全アプリ 
 https://www.anzen.mofa.go.jp/c_info/oshirase_kaian_app.html

20220518 ドイツ製造業の受注残はどんどん積み上がっています

 今朝ドイツ連邦統計局から3月製造業受注残高統計が出ていましたのでご紹介します。

 

受注残高(実質ベース) 前月比+0.6%、前年同月比+2.7%

売上の8.0か月分(前月比+0.1)と過去最高値に到達

 資本財 11.8か月分(前月比+0.4)~3月の伸びを主導

 中間財 4.0か月分(前月比unch)

 消費財 3.5か月分(前月比unch)

国内受注残(黒)はコロナ後の減少がきつめでしたが、最近は受注残積み上がりの主役となっています。(赤:全体、緑:海外)


Auftragsbestand im Verarbeitenden Gewerbe im März 2022: +0,6 % zum Vormonat - Statistisches Bundesamt (destatis.de)

 

ドイツ製造業の受注はコロナ後(対米、対中輸出好調で)比較的素早く回復したのに対し。。。。

 

鉱工業生産は 部品不足(サプライチェーン障害)、人出不足、原材料費高騰などの逆風が長期化しているため、受注と比べて戻りが鈍い、ということが受注残積み上がりの原因となっています。

上記受注残の積み上がり、コロナ後のリベンジ消費、堅調な労働市場EU基金の出動、といった追い風の組み合わせは、まもなく始まるECBの金利正常化(利上げ)に対する十分な抵抗力を提供すると思います。

 

なお、ドイツ連銀が毎週月曜夕刻に公表している週次経済活動指数(WAI:ドイツGDPのリアルタイムモニタリング指標となることを目指しているもの)もじわじわプラス圏に回復しつつあります。

但し、現時点ではまだ▲0.1%ですので、GDP換算(足元13週間VSその前の13週間の対比ベース)でも+0.1%と弱弱しさが残っている状態です。

 

Wöchentlicher Aktivitätsindex für die deutsche Wirtschaft | Deutsche Bundesbank

 

20220517 独ホテル・レストラン業界アップデート

本日ドイツ連邦統計局から(ウクライナ危機の影響が反映された)3月のホテル・レストラン業界の売上高速報値が発表されました。

前年同月比実質+114.8%、名目+124.%と大きく回復しているだけでなく、

10%程度の値上げ(名目と実質の差)に成功している姿が確認できました。

 

ただし、コロナ前の2019年2月との対比では、
実質▲27.7%(宿泊▲34.4%/飲食▲24.6%)
とまだまだ厳しい状況となっています。

2020年、2021年と2年間連続で平時の6割程度の低い売上高で走り続けることを強いられた後、上記のような状況ということですので、ホテル・レストラン業界の財務状況は引き続き相当厳しいのではないかと推察されます。

 

コロナ禍における2年間、夏には毎年いったんかなり戻すものの、寒くなってくるとコロナが再び広がって客足が遠のく/規制が厳しくなるため、平年比3割程度まで落ち込んでしまうというパターンを繰り返してきました。今回は冬の底がかなり浅い(平年比6割程度で済んでいる)ので、今後2年程度は続くと期待されているリベンジ消費(コロナで急騰した貯蓄率の正常化プロセス)でどこまで回復できるか注目しています

(赤線:原系列、青線:季調後)

Gastgewerbeumsatz im März 2022 um 6,2 % gegenüber Vormonat gestiegen - Statistisches Bundesamt (destatis.de)

 

ちなみにドイツのGastgewerbe: ホテル・レストラン業界 は以下の3つから構成されています。

  1. Beherbergungseinrichtungen: ホテル、ペンション、キャンピング場等
  2. Gaststätten: レストラン、カフェ、バー等
  3. Kantinen/Catering: 社員食堂、ケータリング(機内食含む)等

平時の年間総売上高は約900億ユーロ(約12兆円)

その中の1,2,3のシェアは、それぞれ35%、54%、11%(飲食2/3、宿泊1/3)となっています。

20220516 EU委員会経済予測アップデート

 本日発表されたEU委員会の四半期経済予測は以下の通りとなっていました:

        GDP今年 来年     CPI今年  来年

ユーロ圏    +2.7% +2.3%    +6.1%  +2.7%

ドイツ     +1.6% +2.4%    +6.5%  +3.1%

日本      +1.9% +1.8%    +1.6%  +1.5% 

 

定量化は困難ですが、ウクライナ危機の影響はこのように整理されています。

Spring 2022 Economic Forecast: Russian invasion tests EU economic resilience | European Commission (europa.eu)

 

国別の予測も発表されているので、ドイツ部分をチェックしておきましょう。
Economic forecast for Germany | European Commission (europa.eu)

  • 今年、来年とほぼリベンジ消費(黄色:個人消費)頼みの成長

  • エネルギー・資源価格上昇とサプライチェーン障害で生産、設備投資、輸出はまだしばらく抑制されそう
  • 一方、堅調な雇用と異常に高まった貯蓄率の正常化を背景とするリベンジ消費で当面の個人消費は高水準を維持できそう
  • 貿易黒字、経常黒字は、やや水準を切り下げるも、(ユーロ安にも支えられた)高い国際競争力を背景に、引き続き高水準を維持
  • コロナや安全保障でコストが多少かさんでも健全財政は堅持(インフレによる高税収も寄与)

 

20220515 NRW州議会選でもCDUが勝利、ショルツ首相には痛手

終結果判明は翌朝になりますが、20時時点で大勢が決している模様なのでコメントしておきます。

ノルトライン=ヴェストファーレン(NRW)州はドイツで人口最大の州であり、中央政府にとって常に重要な地方選と位置付けられています。SPDがCDUに大差での敗北を喫したため、ショルツ首相とSPDにとっては予想以上の痛手となる一方、先週のSH州議会選に続いて、CDUとGreenには追い風となりました。但し、相場にはあまり影響はないと思います。

 

【得票率】

  • CDUは事前の世論調査(30%程度)を上回る35%超の票を獲得。第二党のSPDに約8%もの差をつけての大勝。ただし前回(2017年)との比較では約3%のゲインに留まる。
  • SPDは、事前の世論調査通りの着地で得票率27%(前回比▲4%)どまり。若者を中心にかなりの票がGreenに流れた模様。
  • Greenは得票を前回比+12%と大きく伸ばし、18%を獲得。SH州に続いてキングメーカーとしての地位を確保。
  • 州政府連立ジュニアパートナーのFDPは今回最大の敗者。前回比7%超を失い、5%条項をギリギリクリアできる水準にまで後退。
  • AfD(極右)も5%条項を辛うじてクリア。左派党は議席ゼロ。




【今回のCDU勝利の立役者、ブスト州首相(46)】~ラシェットの後任

 

 ヘンドリック・ブスト - Wikipedia

 

 

【獲得議席数と連立の行方】

  • 過半数100(全199)議席。第一党CDU(77)と第二党SPD(58)による大連立は他にオプションがなくなった時にしか成立しないため、現実的な選択肢は
    ①CDU+Greenと②SPD+Green+FDPの2つ。
  • 民意を重視するなら黒緑(キウイとも)。CDU+Green=117議席過半数+17)で十分安定的政権運営が可能。
  • ブスト州首相は「CDU政権樹立が強い民意」「経済と環境の両立という難しい課題に全力を注ぎたい」として、早速Greenに連立交渉をもちかける意向。
  • SPD(特に中央幹部)とFDPとしては、SPDが第二党にとどまったとはいえ、中央政権同様の信号機連立(SPD+Green+FDP)の組成が可能(110議席過半数+10)であるため、その可能性の追求を熱望している。
  • CDUがSPDに大差をつけて第一党になっただけでなく、信号機連立の構成要素であるSPDとFDPがともに得票率を大きく落としていることの意味は大きい。SPDには政権組成をリードする大義名分がなく、民意は明らかに黒緑にあるため、黒緑で決着する可能性が高そう。

 

州政府メンバーで構成されるドイツ上院(Bundesrat)計69票の中で、NRW州は6票の重みがあり、これをCDU(黒)からSPD(赤)にひっくり返す意義は非常に大きい(過半数確保が非常に楽になる)ため、SPDの一部(例えばクリングバイル共同党首、キューナート幹事長など)は「是が非でもショルツ政権と同じ信号機連立に持ち込みたい」と考えている模様ですが、この選挙結果ではかなり厳しいと思います。

但し、今後の連立交渉でGreenがゴネてCDUとの連立交渉が行き詰まるような兆候がないかについては要注視です。

 

なお、最近のGreenの健闘/躍進の背景に、ベアボック環境相とハーベック経済相の高い人気があるということは間違いなさそうです。