日独経済日記

日独間の架け橋となることを目指しています

20210924 中道か左のどちらかに方向性を決めるドイツ総選挙(9/26)

昨夜、主要7政党党首/筆頭候補によるTV討論会(20:15~、90分、@ARD/ZDF)が開催されました。

今回の選挙は「(中道か左のどちらかに)方向性を決める選挙」と言われていることもあり、下図のように、中央の司会者の左手/写真右側に 赤赤緑の3党: Green(ベアボック)、SPD(ショルツ)、Linke(ヴィスラー)を、右手/写真左側に AfD(ヴァイデル~女ヒトラーとも呼ばれています)、FDP(リントナ-)、CSU(ゼーダー)、CDU(ラシェット)を配置するという演出になっていました。

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Treffen der Spitzenkandidaten: Die spannendste Debatte, die wichtigste Erkenntnis, der beste Kandidat: Drei Aha-Erlebnisse der Elefantenrunde (msn.com)

 

これまでの3回のトップ3党首相候補者によるTV討論会とは異なり、(誰が一番良かったかといった)視聴者アンケートは実施されていません。

 

本討論会のポイントは以下の通り:

  • ショルツはいつも通り終始沈着冷静を貫き、そつなく無難にこなした
    (番組の建付けがそうなっていたこともあり)他党からのネガキャン的攻撃なし
    ⇒特に支持率を落とす材料なし
    SPDの第一党獲得に自信満々で、AfD以外あらゆる連立オプションを否定せず
  • CDU/CSUとFDPはジャマイカ選好を明言し、赤赤緑の危険に警鐘を鳴らした(CDUはまさにこのロジックで党員の動員/引き締めを徹底中)
  • ベアボックは連立においては自党環境政策実現の極大化を追求
  • ベアボック(Green)とリントナ-(FDP)は対中強硬路線(投資協定にかなりネガティブ)
  • ゼーダーは「何でもかんでも再分配」「無責任にいろいろ実験する」ことによる国の弱体化に強い警鐘を鳴らす一方、(本来は不仲の)メルケルを「ドイツを数々の困難から守り抜いてきた」と称賛
    ⇒「現状維持(Weiter so)」を安易に否定することの危険性を強調

 

本討論会の直前の支持率は、SPD25、CSU/CSU22、Green16くらいで、SPDのリードがしっかり維持されていました。討論で大きな波乱はなかったので、現時点でも概ねこのバランスが維持されているものと推察されます。

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Wahlumfragen zur Bundestagswahl 2021 – Sonntagsfrage (Wahlumfrage, Umfragen) (wahlrecht.de)

 

今回の選挙戦を振り返ってみますと、CDU/CSUSPD、Greenともそれぞれに好調でトップに立っていた時期があり、10%ポイントくらいの浮沈を経験しています。過去にも例がない非常に珍しい展開と思います。本討論論会では以下グラフに出ている政党が勢ぞろいしていました。

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ちなみにUKブックメーカーのオッズは、ショルツ8対ラシェット2くらいで安定的に推移しています。

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Next German Chancellor | Politics odds | Smarkets betting exchange

 

なお、本討論会と直接関係ありませんが、9月26日の選挙当日にゼーダ-がCSU党首として地元バイエルンで選挙結果を迎える(普通はそうする)のではなく、あえてベルリンにやってくるということが話題になっています。恐らく、以下を想定したしたたかな動きと思われます。

  • CDU/CSUが敗北(前回の32.9%から大きく票を落とし、第2党に転落)する場合、バイエルン州でもCSUとして得票率が前回(38.8%)比大きく低下するが、それは全独レベルでのCDUの不振(ラシェット)のせい(ゼーダーは被害者)だという雰囲気を醸し出すため
  • どんな結果になっても、周囲にいるCDU幹部とすぐに会話/根回しを開始し、次の展開に柔軟に備えるため