ドイツ総選挙での投開票が終了し、いよいよ連立交渉という正念場を迎える局面になっています。今後の展開のカギを握る主要4党のキーマン達について、以下のように整理してみました。
上記5人はいずれも常にドイツ政治家人気トップ10と目される大物ばかりです。
ドイツの財務相は、ドイツだけでなくユーロ圏全体にも大きな影響力(資金の出元として事実上の拒否権)を有する超重要ポストです。
実際ショルツ財務相は、EUコロナ基金実現を通じてマクロン仏大統領の信頼を勝ち取りました。
ドイツやEUが今後、「環境に配慮した新しい経済のあり方」を模索する上で、ドイツ財務相ポストの重要性は従来以上に高まると考えるべきでしょう。
同ポストはGreenのハーベックとFDPのリントナーの双方が要求しており、
実際にどちらかが就任する可能性が高いと思います。現時点の感触では、
① 信号機連立ではリントナー Christian Lindner
② ジャマイカ連立ではハーベック Robert Habeck
が有力というイメージでしょうか。
●ハーベックは、連立政権の中で第2党の地位を事実上確保しているので、信号機でもジャマイカでも副首相として待遇されることが確実視されています(選挙結果がイマイチだった責任を取ってベアボックが譲る恰好です)。
ジャマイカではハーベックが財務相を兼務する可能性が高いと思われます。
SPDを選好するGreenが、敢えて第2党のCDU/CSUの首相(ラシェット)を許容してジャマイカを選択するには、Greenに対する大きな譲歩が必要で、かつFDPとしても連立相手が経済重視のCDU/CSUであれば自党の経済政策が実現しやすいので、財務相ポストはGreenに譲れると思います。
【ハーベックのブレーン】
Sebastian Dullien(IMK~労組系)
https://de.wikipedia.org/wiki/Sebastian_Dullien
Marcel Fratzscher(ベルリン研)
https://de.wikipedia.org/wiki/Marcel_Fratzscher
Jens Südekum (デュッセルドルフ大学)
https://de.wikipedia.org/wiki/Jens_S%C3%BCdekum
●一方のリントナーは、連立条件として早くから財務相ポストを要求しています。特に信号機の場合は、財務相として過度な環境政策や分配政策ににらみを利かせるつもりでいます。ただし、財政・経済の経験・知識が乏しく、実力にはやや懸念がもたれています(ハーベックの方が財務相としては国民の評価/期待は上です)。FDPとしては、財務相ポストを取れない場合には、最低でも環境相ポストを抑えて歯止めをかけたい意向です。
【リントナーのブレーン】
Lars Feld(フライブルク大学)
https://de.wikipedia.org/wiki/Lars_Feld
なお、ポスト争奪よりも、各党間政策の調和の方がはるかに重要かつ難しいので、上記議論はあくまで将来の連立交渉最終局面で意味を持ち始める話であるという点には注意して下さい(ドイツでは日本と違って人事より政策の中身をはるかに重視します)。