日独経済日記

日独間の架け橋となることを目指しています

20211020 ドイツ新政権誕生とその環境政策が見えてくるまでのスピード感について

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①ドイツ新政権成立のスピ-ド感

ドイツでは9月26日の連邦議会選挙で大きく議席を増やしたSPD中道左派)、Green(環境重視)、FDP(自由経済重視)の3党による「信号機連立」の誕生がほぼ確実な情勢となっています。本日3党間で22の小グループに分かれて具体的交渉を進めることが決まりました。海外では何となく、ドイツ連立交渉は順調かつハイピッチで進んでいる、との印象を持たれているようですが、現時点ではあくまで「予備交渉」が各党での承認も含めて完了した段階に過ぎません。個別の政策調整やポスト配分など、非常にハ-ドな「連立交渉」が実際に始まるのはこれからです。「連立交渉」の所要日数過去平均は46日と言われており、うまくいけば12月上旬頃には、連立交渉成立+新政権誕生と期待できなくもありませんが、従来のような2党間ではなく3党間での調整となるだけでなく、気候変動対応という難題を抱えている上、妥結結果を各党が持ち帰って党内承認する手続きも考えると、新政権の早期樹立はそう簡単ではないと見るべきでしょう(私はまだ年内五分五分と見ています)。

首相はショルツ(SPD)でほぼ確実でしょうが、環境政策のカギは、実質的に財務省環境省(場合によっては新設される気候変動省)が握ることになると思います。前者にはリントナ-氏(FDP党首)、後者にはハ-ベック氏またはベアボック氏(共にGreen共同党首)の就任が有力視されていますが、現時点で具体的な根拠はなく、あくまで観測にとどまります。実際の環境政策の運営にあたっては、両省間で財源や拒否権発動などを巡って相応の軋轢が発生するものと覚悟しておくことも必要でしょう。

 

ドイツ新政権の環境政策の方向性とスピ-ド感

現時点で3党間で合意している政策の方向性については、先日こちらのブログにまとめた通りです。

20211015 ドイツ信号機連立予備交渉結果の声明文解説 - 日独経済日記 (hatenablog.com)

3党とも環境重視の方向性では一致しているものの、具体的政策においてGreen(規制、国家介入重視)とFDP(極力自由経済尊重)の乖離は大きく、妥協の行方については不透明感がきわめて大きいと言わざるを得ません。環境政策について現時点で見えているのは、脱石炭前倒し(2038年よりできるだけ前に)やアウトバ-ン速度制限見送り(小ネタ)程度です。また、環境政策に限らず、財源についてはほぼ何も固まっておらず、今後の交渉の中でかなりもめる(時間を要する)と見ておくべきでしょう。

·従って現時点では、産業界が具体的に身構えられるような材料はほとんど何も整っていない、というのが実情です。今回の予備交渉の結果、「2022年中に環境即時プログラムを策定する」という合意はなされたので、ドイツ新政権の環境政策の方向性とスピ-ド感は、当該プログラム次第になるものと思われます。動きがあり次第、続報します。