長年、超タカ兼保守派の重鎮として存在感を示してきたヴァイトマン独連銀総裁(写真)は先週(10/20)、2027年までの任期をたっぷり残して「一身上の理由で」突然辞任表明しました。
その後も真相は明らかになっていませんが、ドイツ主要メディアの報道振りなどを総括すると、概ね以下のようにまとめられるかと思います:
【辞任に至った背景】
- ECB内ではドイツの国益を代表するヘビーウェートとして、タカ的(安易な金融緩和拡大・長期化に反対)、保守的(金融政策の柔軟運営、対象拡大に反対)を
長年にわたりほぼ孤軍奮闘状態で主張し続けてきた。 - 2019年のECB総裁レースでラガルド氏に敗れ、念願だったECB総裁就任への道が完全に絶たれた。
- メルケル首相引退に加えてCDU/CSUの選挙大敗で、今後政治的後ろ盾が更に弱くなることが確定した。
- このような状況下で、展望なき孤軍奮闘を今後もずっと続けていくのはさすがにしんどくなった。
【有力視されている後継者】
独連銀総裁後継者に相応しい人物として概ね以下5名が取り沙汰されていますが、
上の二人がこの順で有力視されています:
- シュナーベル・ECB専務理事(女性)~ドイツ出身ECB理事をまた取り替えることになるというネック以外は最適任と目されている。
https://de.wikipedia.org/wiki/Isabel_Schnabel - クーキース・独財務次官(男性)~ショルツ氏の信任厚く人物としても申し分ないが、男性である分(人心刷新のチャンスと捉えられているので)シュナーベル氏より不利か。
https://www.bundesfinanzministerium.de/Content/EN/Standardartikel/Ministry/Minister_and_State_Secretaries/Joerg-Kukies.html - フラッチャー・DIW理事長(男性)~ハト派過ぎるため、ドイツ国内からの反対が強そう(よりによってドイツからハト派を出す必要はないという主張)。
https://www.diw.de/de/diw_01.c.414852.de/personen/fratzscher__marcel.html - アスムセン・独保険業界会長(男性)~実力十分の大物ながら、欧州金融危機対応/HypoRE処理でFDPとGreenに嫌われている可能性が高い。
https://safe.menlosecurity.com/docview/viewer/docNEBBE171557C78a049ade3f052ffac0fa9915dc7bb7dcdffa0db580a35d74c589db56c86e1216 - ブーフ・独連銀副総裁(女性)~副総裁からの自然な昇格かつ女性ということでぴったりなのだが、やや線が細くて荷が重いと懸念されている。
https://www.bundesbank.de/de/bundesbank/organisation/vorstand/claudia-buch
ECB25人の理事のうち、残るタカ派は5人だけになるので、上記の誰が後継するにしても
ECBのタカ派色/保守色が薄まることだけは間違いなさそうです。
信認のアンカー役の重鎮がECBを去ることにより、ユーロの信認が落ちると懸念する声まであります。