本日ドイツ5賢人会の年次経済報告が発表されました。
ヘッドラインは3日前にリークされていた通りで、下表の通り、最近の内外主要機関の予測平均値と整合的で、サプライズはありませんでした。
インフレ推移の予測
来年の総合インフレ率は、前年同月が高水準の頃の対比になるので表面的に急低下しますが来年はコアインフレ率がしばらく2%超に滞留します
潜在成長率の予測
今後は日本同様労働投入(橙)がマイナスに転ずるので、1%割れ方向にじりじり低下見込みです。(青:資本投入、緑:全要素生産性)
主要指標予測一覧
なおドイツ5賢人会の年次報告では、経済予測部分よりむしろ政策提言部分の方が重要かと思います。
日本の将来を考える上でも少し役に立ちそうなので、ポイントを私なりに整理して列挙しておきます。
【経済予測/分析】
- コロナ前2019年Q4のGDPレベルは2022年Q1に回復見込み
- 足元のサプライ障害で成長は今年から来年に先送り
- 成長のリスクはコロナとサプライ障害長期化
- インフレについては、賃金上昇加速とエネルギー価格続伸による長期化リスクあり
- 労働市場はだいぶ正常化してきたが、自営業の減少(弱いのでコロナでどんどんやられている)が気がかり
- コロナで操短がフル稼働して失業率上昇を防げたが、これが生産性にどう影響しているかには注意が必要(デジタル化加速分は生産性を押し上げているはずだが、全体の効率は?? 潜在成長率は低下傾向)
- コロナでは弱い人ほどダメージ大(幼児、学力の低い子供、職業スキルの低い大人/特に若者)
- コロナで政府債務比率はGDP比70.6%に拡大しているが(海外から見れば超健全で余力あり)、次の危機に備えるためにも、経済にブレーキをかけないよう配慮しつつ迅速な正常化が重要。低金利は追い風
【政策提言】
- 各種政策はにはより納得感が求められるので、エビデンスベースかつ透明な形で推進する
- トランスフォーメーション(気候変動、デジタル化対応)ではその担い手となる人の教育が大変重要
幼児、学力の低い子供、職業スキルの低い若者への教育・支援を強化する - 人的資源がスムーズに再配置されるよう、規制緩和、住宅供給、ホームオフィス環境整備、
起業/廃業/副業支援、職業再教育強化などを進める - エネルギーについては、再エネ中心に極力分散化を図る(安全保障にもプラス)
- EUのコロナ基金は、トランスフォーメーションに最大限うまく活用すべき
- トランスフォーメーションに伴う投資は負担/コストではなくチャンスに変える
- CO2排出削減に逆行する既存の補助金は撤廃
- ビッグデータが社会全体の改善のために利用しやすくなるための環境整備
- 必要な公共投資は、優先順位が高く、民間投資を活性化させるようなものをスピーディーに遂行する
- トランスフォーメーションに必要な、EU市場の深化と国際協調をうまく進めながら遂行する
以下「トランスフォーメーション実現のための政策オプション一覧」のマトリックスでは、社会的弱者に対する教育面でのサポートが高く位置づけられています
ドイツがまもなく人口減少局面に入ることを強く意識しているのかもしれません。