日独経済日記

日独間の架け橋となることを目指しています

20220104 ユーラシアグループのトップリスク2022

毎年恒例のユーラシアグループによる今年注意すべきリスクトップ10が発表されました。 

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EurasiaGroup_TopRisks2022.pdf

 

日本語報道ではこのような感じで速報されました。

https://www.yomiuri.co.jp/world/20220103-OYT1T50111/

これら10のリスクについて、ドイツと日本に対する影響を私なりに考えた上で、以下行間に記入しておきました。

国際情勢のリスク分析を手がける米コンサルタント会社「ユーラシア・グループ」は3日、2022年の世界の「10大リスク」に関する年次報告書を発表した。1位には、中国が新型コロナの感染封じ込めを目指す「ゼロコロナ政策」に失敗し、世界経済や各国の政情が不安定化する事態を挙げた。報告書は、「先進国ではワクチン接種の推進などによってパンデミック(大流行)の終息が近付いている」とした一方、「ほとんどの国はより困難な時期を迎えることになる」と指摘した。中国国内の消費の落ち込みやサプライチェーン(供給網)の混乱といった影響は世界に波及し、経済不安やインフレの加速、格差拡大などに対する不満が、各地で政情不安を引き起こす恐れがあると警告した。これを「ノー・ゼロコロナ」と表現した。

 

>① 中国のワクチンがイマイチなこともあり、中国でオミクロンは大流行し、強引な都市封鎖などでは抑えきれなくなる。中国内のサプライチェーンや消費が大きなダメージを受ける可能性が高い(中国は先進諸国と全然違った展開になるというのは、さすが目の付けどころが鋭い!)。工場や消費が止まれば、対中経済依存度の大きい日独経済にも相応のネガティブな影響が出そう。

 

 

2位としたのは、国家や政府の力が及ばない「巨大IT企業の影響が強まる世界」のリスクだ。デジタル空間では一握りの巨大IT企業が主役となり、個人の思考にも影響を与えると指摘。米国では11月の中間選挙を前に、デジタル空間に誤情報がさらに広がり民主主義への信頼が損なわれると予測。デジタル分野において米中の緊張が高まるだろうとの懸念を示した。

 

>② ドイツはファーウェイの締め出しを明言していないので、米国から圧力を受ける可能性あり。IT巨大企業への課税問題ももめそう。

 

3位には「中間選挙」を挙げ、トランプ前大統領の2024年米大統領選への出馬を左右するだけでなく、「歴史的な転換点となる」とした。民主党のバイデン大統領の支持率が低下する中、野党共和党が議会上下両院の多数派となる可能性があると分析した。そして民主党共和党のどちらが勝っても、「不正選挙だ」との批判合戦となり、混乱や暴動が起こる恐れがあるとした。

 

>③トランプ復活はドイツにとって悪夢。日本は米国と中国の択一をより強く迫られる可能性あり。

 

4位には「中国内政」を挙げた。今年後半の共産党大会で 習近平 総書記(国家主席)が異例の3期目政権に踏み出すことが確実視されており、習政権に対するチェック機能がほとんどないと指摘した。

 

>④独裁色を強める中国に対し、ドイツと日本がどう付き合っていくかはますます悩ましくなる。

 

5位は「ロシア」で、ウクライナ情勢を巡るプーチン大統領次の一手に注目し、米露関係は極めて危険な緊張状態にあるとした。

 

>⑤メルケル(東独出身、ロシア語堪能でプーチンの信頼が厚かった)なきあとのドイツが、プーチンと渡り合うのは大変そう。苦労して作ったノルトストリーム2はいつになったら稼動できることやら。

 

 

6位には、核合意の立て直しを巡り、対外強硬姿勢を崩さない「イラン」を選んだ。

>⑥イスラエルがイランを先制攻撃するリスクあり。日本の原油輸入が心配。

 

 

7位には「脱炭素政策とエネルギー政策の衝突」、8位には「世界の力の空白地帯」、9位には「価値観の衝突に敗れる多国籍企業」、10位には「トルコ」を挙げた。

 

>⑦ 当面はエネルギー価格高騰(カーボンニュートラル実現を目指す以上、投資はなされず供給は増えづらい)にどう対応するかが日独共通の悩み。 

>⑧対立する米中が今年は内向きになる中、ドイツはG7議長国として、日本は米中の仲介役としての役割を問われる。 

>⑨日独の国際的大企業も、多様化する価値観(特に環境、人権など)への慎重な対応を迫られ、対応を誤ればたちまち行き詰りかねない。 

>⑩ドイツにはトルコ人が約150万人もおり、トルコの問題は他人事ではすまないことが多い。

 

ユーラシア・グループは、国際政治学者イアン・ブレマー氏が社長を務め、戦争や政情不安が起きる危険性など、地政学的リスクの分析に定評がある。