プーチン露大統領は、
- 欧州/世界が脱炭素に思い切り舵を切った瞬間を狙いすました上で、
- 自国が豊富に保有し、脱炭素実現前でまだ価値のある炭素エネルギー(原油、天然ガス)と、政治的影響力行使可能な中央アジアのウランを武器にして、
- ロシアの国益(NATO東方拡大阻止、自国資源の高値販売)を極大化すべく、
軍事力までちらつかせながら欧州に揺さぶりをかけてきている。
ドイツ:
- 2050年カーボンニュートラルの達成に向けて、褐炭/石炭/原子力(18.5%/9.3%/11.8%、合計で電源の4割)をこれから大幅に圧縮していく上で、再エネ(40.5%)のシェアを大幅に拡大したい意向ながら、ある程度は天然ガス(15.2%)に頼らざるを得ない。
- そのためにEUの一部からの強い反対を押し切ってロシアとの間にわざわざ作ってきたのがノルトストリーム(直通パイプライン2つ)。
- 2022年の原発全廃が控えている(残り3基の年内廃炉は今更止められない)こともあり、天然ガスを止められて困るのはドイツの方。
- ゼロカーボンを急ぐあまり、かえって環境汚染がひどく、運賃も嵩んで高くつく米国のシェールガスを買うことになれがこれほど辛辣な皮肉はない。
フランス:
- 電力の2/3を原子力に依存しており、今後も安全性の高い小型モジュール炉などを積極的に活用しようとしている。
- しかし燃料であるウラン輸入の約3割をカザフスタン、約1/4をウズベキスタン(いずれも親露)に依存している。
- 特に4月の大統領選で再選を狙うマクロン大統領(再選確率6-7割)としては、エネルギー価格の更なる上昇による市民生活への打撃を何としても回避したいところ。
- フランスとしてもうかつにロシアを敵に回せない状況にある。
EU全体としてみても、ロシアの天然ガスに対する依存度は4割超と高い。
欧州の天然ガス価格は、昨年末の急騰からいったん落ち着いているものの、例年の何倍もの高価格で高止まっており、このままの状況が長期化するだけでもコスト高のダメージはかなり大きい。
【関連のご参考】
欧州天然ガス価格~オランダTTF
欧州原油価格~ブレント
https://tradingeconomics.com/commodity/brent-crude-oil
エネルギー関連データベース
Transformation – Key World Energy Statistics 2021 – Analysis - IEA