日独経済日記

日独間の架け橋となることを目指しています

20220418 武器供与問題についてのドイツ主要メディアの論調

ドイツは、哨戒艇、潜水艦、戦車などの立派な武器輸出大国ではあるのですが、これまで、過去への歴史に対する反省から、紛争当事国への武器輸出は政治判断で回避してきました。そのため、ドイツは当初、他国がウクライナへの武器供与決定に踏み切る中で、ヘルメットのみの供与を打ち出してしまい、大きな落胆と失笑を集めました。

 

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻開始(2月)後、人権、民主主義などの諸価値を踏みにじるロシアの行為は許せない、という国民のコンセンサスのもとでドイツはこの方針を転換し、対戦車砲や携行式地対空ミサイルなどの(防衛型の)武器の直接供与に踏み切りました。

 

その後更にロシアによる戦争犯罪行為が明らかになるにつれて、「戦車などの重火器を含めた(攻撃型の)武器供与」を進めるかどうかが焦点に浮上しています。

この点についての最近のドイツ主要メディアの論調をご紹介します。

 

【反対/慎重派】~ショルツ首相を含むSPD

  • ドイツからの戦車や戦闘機などの提供は(フィンランドスウェーデンNATO電撃加盟などといった他の事情との合わせ技で)ロシアにとってのレッドラインを超える可能性があり、慎重に見極める必要がある。
  • 天然ガス確保にまだ目処が立っていない中でロシアからの供給を突然止められれば、ドイツ経済が被るダメージは測り知れない。
  • ロシアが、化学・生物兵器核兵器の使用や第三次世界大戦に踏み切る口実を与えるような行動は何としても回避すべき。
  • 従って支援資金の大幅上乗せを落としどころとする提案は妥当。

 

【積極派】~その他

  • ウクライナが自衛のために今最も必要としているものは強力な武器である。勇敢に戦い続けているウクライナ戦士に対する精神面での強力なサポートにもなる。一方、決断を遅らせるほど多くの命失われる。
  • 悲しい現実ではあるが、キリスト教を共有していても戦争を止められない。武器なくして戦争はなくならない。ナイーブな平和主義とは決別し、新たな現実を見据えた決断に踏み切るべき。
  • NATO内の責任ある強国としてこの程度のこともできなければ、同盟国から大きな失望を買う(歴史問題は言い訳にしか見えていない/ドイツの親ロ路線にそもそも重大な責任がある)。

 

Civeyのオンラインアンケートによると、「ウクライナへの戦車などの重火器供与」に対して、ドイツ国民の

 35.1%が強く賛成、14.1%がどちらかと言えば賛成(合計するとほぼ半数)

 29.0%が強く反対、10.6%がどちらかと言えば反対

となっています。

 

<ご参考> DLFウクライナ情勢ライブティッカー WEB翻訳で十分使えます

Newsblog zum Krieg in der Ukraine - 1100 Ärzte melden sich für Ukraine-Einsatz (deutschlandfunk.de)