日独経済日記

日独間の架け橋となることを目指しています

20220424 そろそろ独伊スプレッドも要注視

EUコロナ基金設立/EU共同債による資金調達開始以降、10年独伊国債スプレッドは100bp程度で低位安定していました。

EUコロナ基金はイタリアのGDPを今後4年間累計2%くらい押し上げる効果がありますし、EU共同債はイタリア国債の発行を増やさなくて済む上、ECBが債券購入プログラムでずっとイタリア国債を買い支えてくれているので、コロナ禍で厳しい環境下においても、独伊スプレッドの歴史的低水準が投資家に受け入れられていたのです。

しかし最近は米国主導の世界的金利上昇(正常化)の影響(あおり)を受けて、当該スプレッドは170bpまで拡大してきています。

欧州債務危機後のレンジ、100-300ppの真ん中に戻っただけと言えなくもないので、今のところはまだ「正常化」の範囲内と言ってよいと思いますが、世界的金利上昇の中で脆弱な債務者は真っ先に市場から狙い撃ちされますので、イタリアの債務問題についてもそろそろ目配りを始めておいた方がよろしいかと思われます。

Italy 10 Year vs Germany 10 Year Spread Bond Yield - Investing.com

 

イタリアは、国債の債務残高が非常に高く、日本同様、低成長、高債務という問題を抱えています。政府債務比率は、コロナ前の130%強から現在150%強まで上昇しています。

 

EU全体の債務比率はコロナで80%⇒90%となっただけなので、イタリアは平均以上に悪化していると言えます。

 

 

ちなみに財政優等生(ドケチ路線)のドイツは60⇒70%と立派に模範的行動を貫いています。

 欧州連合 | 政府債務(対GDP比) | 2000 – 2022 | 経済指標 | CEIC (ceicdata.com)

 

直近(2022年4月)のIMF世界経済見通しでは、ウクライナ危機勃発を受けてドイツとイタリアのGDPが大幅に下方修正(今年分各▲1.7/▲1.5%)されましたが、それでもイタリアは今年+2.3%、来年+1.7%の実質成長を確保しており、当面のインフレ高止まりで名目成長がかなりの高水準になることから、うまく行けば年3%程度のペースで債務比率は減少する可能性があります。これは独伊スプレッドタイト化圧力となりえます。

 

ECB利上げ軌道に対する市場織り込みは概ね左図赤線の通りです。この程度の(短期)金利上昇であれば、利払い負担の激増を心配する必要はないと思います。

ECBはFRBと異なり、QT(債券保有残高縮小によるバランスシート圧縮)には非常に慎重(今のところやりそうな気配が全くない)ので、ECBの利上げ過程でイタリア国債が投げ売りされてしまう可能性も低いと思います。

最大の問題は来春のイタリア総選挙です。現在のドラギ首相は、市場からの信任が厚く、かつ欧州債務危機問題の克服に貢献した実績ある前ECB総裁でもあるため、市場からの攻撃を受けることはまずありません。

しかし来春の選挙後にドラギ氏以外が率いるポピュリスト政権が誕生し、改革路線から放漫財政に舵を切りそうだ、と市場が意識始めるタイミングで独伊スプレッドの拡大余地を探る展開が始まるでしょう。

遅くとも今年後半にはイタリアの政局にも目配りが必要になると思います。