日独経済日記

日独間の架け橋となることを目指しています

20220629 ドイツ6月CPI減速の幻

先ほどドイツ連邦統計局からドイツの6月のCPI速報が発表になり、前年同月比+7.6%と市場予想の+8.0%、5月確報の+7.9%をかなり下回ったので、「ひょっとしてドイツのインフレはもうピークアウトし始めたのではないか」という期待が広がっているようです。

 Germany Inflation Rate - May 2022 Data - 1950-2021 Historical - June Forecast (tradingeconomics.com) 

 

ドイツ国内基準では、前月比+0.1% 前年同月比+7.6%(5月+7.9%)

ユーロ圏共通基準のHICPでは、前月比▲0.1% 前年同月比+8.2%(5月+8.7%)

ですので、前年同月比は確かに相応に低下しているように見えます。
Inflationsrate im Juni 2022 voraussichtlich +7,6 % - Statistisches Bundesamt (destatis.de)

 

しかし、今月6月から開始された、①ガソリン減税(補助金による1割程度の小売価格押し下げ)、②9ユーロ切符(月9ユーロで近距離バス、電車乗り放題)による特殊効果があることを忘れてはいけません。

私のざっくりとした手元試算では

①ガソリン減税: CPIウェート 3.5% 前月比価格低下幅 約▲1割 ⇒▲0.35%

②9ユーロ切符: CPIウェート 0.5% 前月比価格低下幅 約▲7割 ⇒▲0.35%

なので、今回のCPIは前月比で▲0.7%程度は実勢より低く見えてしまっています。

 

実際、ドイツ連銀の直近(6月)経済分析でも、実施月(6月)のガソリン減税は▲0.4%、9ユーロ切符は▲0.5%と計▲0.9%のインフレ押し下げ効果があると予測されています(私の試算より大きいです)。

他の物価が前月比横ばいなら、今月のCPIは前月比▲0.9%となるはずですので、今月の前月比+0.1%は実質+1.0%(年率+12%)となり、インフレピークアウトからは程遠いというのが実態ということになります。

ガソリン減税も9ユーロ切符も、8月までの期間限定措置ですので、9月にはまるまるその反動が出ます。年平均値を押し下げる効果もほとんどありません(各▲0.1%程度)。

今月のCPIをもって「ドイツのインフレはついに沈静化し始めた(ECBはそんなに利上げしなくて済む)」などと期待するのは絶対にやめておいた方が良いと思います。

 

【7/13追記】本日CPI確報が出て、「ガソリン減税と9ユーロ切符なかりせば前年同月比+8.6%(押し下げ効果は▲1.0%もあった!)」ということが確認されました。繰り返しますが、この時限措置は8月末に終了しますので、9月に反動が出ます。

Inflationsrate im Juni 2022 leicht abgeschwächt bei +7,6 % - Statistisches Bundesamt (destatis.de)