日独経済日記

日独間の架け橋となることを目指しています

20220630 ドイツ失業者/率急増はウクライナ難民大量受入れによるもので、景気悪化によるものではありません

つい先ほどドイツ連邦雇用庁から6月分のドイツ雇用統計が発表されました。


ヘッドラインの失業者数と失業率が想定外の急上昇をしており、戸惑っている方も多いのではないかと思いますが、すべてウクライナ難民大量受け入れウクライナ労働力人口、2月比+493千人)によるテクニカルな(見かけ上の)ものであり、ドイツの景気が急減速して失業者が急増しているという状況とは全く異なりますのでご注意ください。但し、これらの人々が戦力化してくれば、中長期的には人手不足に伴う賃金上昇圧力が緩和され、インフレ抑制的に働く効果はあると思います(金利低下要因との解釈は可能)。一方、個人消費の下支え要因ともなります。

 

以下エッセンスをご紹介します。


●季節調整後の失業者数が+133千人と想定外の数字になっているため、市場系WEBサイトも(今のところ)データやコメントを更新しあぐねています。 

Germany Unemployment Change - May 2022 Data - 1992-2021 Historical - June Forecast (tradingeconomics.com)

 失業率は5.3%と0.3%跳ね上がっています。

 

以下ドイツ連邦雇用庁月報サイト(ドイツ語)のオリジナルデータを確認します:

Einzelausgaben - Statistik der Bundesagentur für Arbeit (arbeitsagentur.de)

 

●雇用の先行指標である、求人数(上線:残高、下線:新規)はコロナ前の水準を超えて非常に高い水準を維持しています。但し、今回は新規流入(下の線)にわずかながら陰りが感じられます。



●ifo雇用バロメータ(上記求人数と並ぶ有力なドイツ雇用先行指標)も同様で、引き続き高水準を維持しながらも、わずかに低下しています。

 

 ifo Beschäftigungsbarometer gesunken (Juni 2022) | Fakten | ifo Institut

 

●操短(勤務時間と給与を減らして雇用を維持するしくみ~給与は公的支援で一部補充される)の減少は、昨年末以降オミクロンに続くウクライナでやや足踏みしていましたが、オミクロン沈静化を背景に再び急減しています(ヘッドラインに反映されない質的改善であり、非常に良い兆候です)。




●スキルなどが低く長期失業となっているハルツⅣ(SGBⅡ)受給者数にウクライナ難民がカウントされて一気に跳ね上がっているため、ちょっとトレンドが読みにくくなりました。