日独経済日記

日独間の架け橋となることを目指しています

20220712 EUR/USDのパリティ(1.00)割れトライ、いったん踏みとどまりました

EUR/USDのパリティが近づいています。インフレによる購買力急低下と併せて、最近はドイツ主要メディアで以下のような写真や表紙を頻繁に見かけるようになっています。

FOCUS - ePaper;  

 

ユーロ安の原因(口実)とされているのは以下諸点です。ドイツでは「ECBの金融政策がそもそも根本的に誤っている」という論調もよく聞かれます。但し、足元は1が一番注目されているように思います。7/22に現在修繕中とされるノルトシュトリーム1のガス供給が予告通り再開されなければ、パリティ割れは確実と思われます(一気に0.96あたりまで試しに行ってもおかしくない)。

  1.  ロシアからのガス供給が完全に止まり、欧州経済が大混乱に陥る
  2.  中国が再びゼロコロナのロックダウンに動きだしており、欧州からの輸出が失速する
  3.  FEDは来年利下げが必要になるかも知れないくらい利上げ(年内約2%、資産圧縮も断行)しようとしているのに対し、ECBは金利正常化に思い切り腰が引けている(年内せいぜい1%、しかもまだ利上げに着手すらしていない、資産圧縮は回避)
  4.  ウクライナの戦争長期化、復興支援のため、欧州は膨大な資金負担を強いられる
  5.  (4のせいで)ユーロ債務危機の再発可能性が高まっている

 

本日(7/12)欧州時間午前中、ロシアからの天然ガス供給一時停止(上記1の口実)をきっかけにマーケットは1.00割れを試しに行ったのですが、結局は売り切れず、現時点ではいったんショートカバーが入って小戻ししています。

Euro Dollar Exchange Rate - EUR/USD - 2022 Data - 1957-2021 Historical - 2023 Forecast (tradingeconomics.com)

 

IMF世界経済見通し(2022年4月)によると、EUR/USDの購買力平価は以下の通りとなっており、1.00だと3割近くのユーロ過小評価ということになります。

  2021年    2022年    2023年    2024年    2025年    2026年    2027年
  1.3605     1.3793     1.3812     1.3889     1.3908     1.3928    1.3928

 

ついこの間出たばかりの、ECBスタッフプロジェクション(2022年6月)では、今年来年と1.05を想定していました。当然のことながら想定以上のEUR/USD下振れはインフレ押上げ要因となります。

Overview (europa.eu)

 

直近(2022年6月調査)の日銀短観における想定レートは以下のようになっていたので、これを基に日本企業の2022年度下期EUR/USD想定レートを計算すると、
1.1052(131.65/119.12)となります。
現在のパリティ近傍のEUR/USDは、日本企業にとっても予想外のドル高ユーロ安ということになります(但し、ユーロ円は実勢が想定に近づいてきました)。

パリティ近くだとドル円(136.70)とユーロ円(137.2)の数字がほとんど同じで紛らわしくなるので、ディールをされる方々は要注意です。

https://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2021/tka2206.pdf

 

EUR/USDのパリティは2002年以来20年ぶりということで注目を集めやすいのですが、過去にはもっと下げていたこともあるので、この程度で通貨危機とまで呼んでしまうのは行き過ぎかなと思います。

Technicals suggest further downside for euro past parity