日独経済日記

日独間の架け橋となることを目指しています

20220717 9ユーロで1ヶ月電車バス乗り放題の切符を巡る議論

一般家庭でのエネルギー価格高騰のダメージを軽減するための切り札として、6~8月の期間限定で導入された9ユーロ切符(ドイツ全国の近距離電車・バスが1ヶ月間たった9ユーロで乗り放題となるチケット)をめぐる議論が白熱しています。

各種主要メディアをチェックしている中で、私なりに足元の注目ポイントを整理すると以下の通りです。

  • 身近な公共交通機関の利用がほぼタダ同然になるので、インフレ負担軽減策として効果は絶大で、利用者には好評。
  • 9月以降の継続を望む声も多く、財政負担をやや減らす形の月69ユーロ切符や、年365ユーロ切符を発行してはどうかという提案がなされている。
  • ガソリン代がかさむ車の利用を減らして、公共交通機関にシフトする人も増えており、地球温暖化(CO2削減)対策としても効果を発揮している。
  • 電車の乗客数が4割以上急増し、一部の公共交通機関ではキャパオーバーによる混乱が発生している。
  • 近距離電車と同じ線路を走る遠距離新幹線にも遅れやキャンセルが目立つなどの悪影響が出ている。
  • 鉄道・バス関連の労働組合は「職員の負担・ストレスが大変」「病欠が増えるなど事態は深刻」と不満を募らせ、態度を強硬化させている。

 

„Das 9-Euro-Ticket macht krank“ (msn.com)

 

なお、金融市場との関連において重要なのはインフレ指標への影響度ですが、この9ユーロチケット(9-Euro-Ticket)とガソリン減税(Tankrabatt)のコンビは、ドイツのCPIで13%のウェートを占める交通費は前月比▲6.2%となっており、CPIを0.8%押し下げています。

Inflationsrate im Juni 2022 leicht abgeschwächt bei +7,6 % - Statistisches Bundesamt (destatis.de)

 

逆に言うと、▲0.8%の押し下げ効果があっても結局前月比+0.1%の仕上がりとなっていますので、本質的なインフレ減速の兆しは確認できない、ということになります。

Germany Inflation Rate MoM - June 2022 Data - 1950-2021 Historical - July Forecast (tradingeconomics.com)

 

来年のインフレ予想もじりじり上昇し続けています。

Global inflation tracker: see how your country compares on rising prices | Financial Times (ft.com)