日独経済日記

日独間の架け橋となることを目指しています

20220729 ドイツGDP、CPI、雇用 おまとめコメント

①本日ドイツ2022年第2四半期のGDP速報が発表され、懸念されていたマイナスは回避し、前期比フラットで着地していました(Q1は+0.8%と大幅上方修正)。

速報なので内訳が見えない上、過去に遡って結構修正されている(昨年Q3▲1.0%pt、Q4+0.3%、今年Q1+0.6%など)ので、解釈が難しいのですが、

ドイツを含め、ユーロ圏全体として、足元の状況は思っていたほど悪くなかったが、これからの悪化はやはり心配

ということかと思います。

Bruttoinlandsprodukt stagniert im 2. Quartal 2022 - Statistisches Bundesamt (destatis.de)

 

他のユーロ圏諸国のGDPが予想外に強く、ドイツは今回近隣諸国への純輸出のおかげで救われた可能性が高いように思われます。

Euro Area GDP Growth Rate - 2022 Data - 2023 Forecast - 1995-2021 Historical (tradingeconomics.com)

 

しかし、ユーロ圏やドイツのPMIは7月に恐ろしく低下していますので、今後相応に悪化するという覚悟は必要そうです。

 

②7月ユーロ圏インフレ(HICP)は、前年同月比+8.9%と過去最悪を更新し、減速の兆しが一切見られませんでした。


Euro Area Inflation Rate - June 2022 Data - 1991-2021 Historical - July Forecast (tradingeconomics.com)

 

ドイツのHICP(ECBがコントロールしたいユーロ圏共通ベースのインフレ率)で前月比+0.1%~+0.4%(年率+1.21~4.91%ペース)が続く場合に、ドイツHICPの前年同月比がどのように推移するかをラフにシミュレーションしたものが以下のグラフです。

9月に9ユーロ切符とガソリン減税が剥落し、前月比が+0.8%一時的に押し上がるという前提で計算してあります。

 

このグラフから以下2点が読み取れるかと思います。

  1. 多少景気が減速しても、よほどのエネルギー安がなければ、ドイツHICPは年内8%超の水準で高止まりする可能性が高い
  2. 前月比(足元のインフレ速度)が高かろうと低かろうと、来年1~5月は前年同月比が大きく下がっているように見えやすい<今年1~5月の上昇幅が非常に大きかった(ベーシス効果)のため>。

 

③本日ドイツ連邦雇用庁から7月分のドイツ雇用統計が発表されました。
 以下エッセンスをご紹介します。

  • 季節調整後の失業者数は+48千人と市場予想を上回る増加。 失業率も5.4%と前月比0.1%上昇しています。
  • 6月から大量のウクライナ難民を失業者としてカウントし始めたことによる表面上の数字の悪化ではありますが、折りしもグローバルリセッション懸念の台頭で雰囲気が悪い中でもあり、労働供給が急増しても全然心配ないと言い切るのは危険でしょう。
  • 但し、連邦雇用庁は「ウクライナ難民受入れの影響を除けば、雇用は安定的」と総括していますので、ドイツ経済減速(Q2は前期比フラット)でいきなり失業が増え始めた、と解釈するのは誤りです。
  • 一方、求人数、ifo雇用バロメータ-には軟化の兆しがあり、今後の悪化については警戒する必要があります。

 

https://tradingeconomics.com/germany/unemployment-change

 

以下ドイツ連邦雇用庁月報サイト(ドイツ語)のオリジナルデータなどを確認しておきます:

 

●雇用の先行指標である、求人数(上線:残高、下線:新規)は
 コロナ前の水準を超えて高水準ながらも、今回久々に減少に転じています。
 今回は新規流入(下の線)にもかすかに陰りが感じられます。

 

 

 

●ifo雇用バロメータ(上記求人数と並ぶ有力なドイツ雇用先行指標)も同様で、
 引き続き高水準を維持しながらも、低下し始めています。
 自動車・電機セクターでの求人は根強いながらも、
 サービスセクターが求人に慎重になり始めた模様です。 

 

 

 

●操短(勤務時間と給与を減らして雇用を維持するしくみ~給与は公的支援で一部補充される)の減少は続いています。基調として人手不足が続いていることには変わりなさそうです。ヘッドラインに反映されない質的改善であり、こちらは安心材料です。

 

 

●スキルなどが低く長期失業となっているハルツⅣ(SGBⅡ)受給者数に
 ウクライナ難民がカウントされて一気に跳ね上がっています。
 通常の失業手当受給者(SGBⅢ)の減少足踏みは少し心配すべき兆候です。