日独経済日記

日独間の架け橋となることを目指しています

20220820 ドイツガス小売価格については、10月からの転嫁分と減税分がほぼ打ち消しあうことになりそう

人気低迷に苦しむショルツ首相は、ガス価格高騰を中心とするインフレ対策の策定に奔走していますが、先週その第一歩としてガスに対するVAT引き下げ方針(10月から標準税率19%の代わりに軽減税率7%を適用)を発表しました。

 

ドイツのHICPにおけるガスのウェートは、以下リンクによると
<28.65/1000~ほぼ3%>なので

https://sdw.ecb.europa.eu/quickview.do;jsessionid=CEB71991D6BE6593EABBD502AFAF8C47?SERIES_KEY=122.ICP.A.DE.N.045210.4.INW

 

VAT引き下げ分▲12%ptの直接的なインフレ押し下げ効果は ▲0.3~0.4%にとどまりますがガス関連商品・サービスなどへの波及を含む間接的影響も併せて考えると、全体的なインフレ押し下げ効果は 0.7%10月からの価格転嫁分をやや上回るくらい、とされています。

 

先日こちらのように、価格転嫁分による影響を試算しましたが、

20220817 ドイツのインフレ率は年末に向けてもう一段上昇する可能性が高そうです - 日独経済日記 (hatenablog.com)


今回「10月からの価格転嫁と減税がほぼ打ち消しあうもの」という前提でドイツHICPの軌道をシミュレーションし直した結果が、こちらになります。

 

エネルギー価格は今後も変動するでしょうし、これから追加施策も出てくるので、予想は難しいのですが、当面のドイツのインフレ率の見栄えについては、今のところ、

  • 9月には9ユーロ切符とガソリン減税(共に後継策が固まりそうにない)の効果が剥落するので、更なるインフレ率上昇は避けられない。
  • しかし年末のどこかで「さすがにそろそろピークアウトか」と期待を持たせる展開にはなりうる。
  • 足元策定中の「インフレ対策(社会的弱者救済)パッケージ」の中に、直接インフレ率を押し下げる施策が含まれていれば、その期待が更に高まりやすくなる。

というイメージでいればよいかと思います。

 

ちなみに、市場のインフレ期待は再び上昇を始めており、最近の金利上昇はそれが原因です。

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