ドイツでは日本と違ってほとんどの銀行が上場していないので(例えば3本柱の二つである貯蓄銀行や信用組合が非公開)、日本のように気の利いた財務ランキングの類はまず手に入りません。
ドイツの銀行業界全体の財務状況を調べたければ、ドイツ連銀の(銀行監督用の)集計データに頼るしかありません。
毎年9月のドイツ連銀月報に前年度の分析結果が報告されており、今回2021年度分が出たのでそのエッセンスを簡単にご紹介します。
●基本計数(2021年)〜銀行数、支店数、従業員数とも減少継続。
銀行数 支店数 従業員数
全銀行 1,456 21,697 540,365
3大銀行 3 4,037 N.A.
州立銀行 6 179 27,150
貯蓄銀行 371 7,732 194,950
信用組合 771. 7,297 135,500
●ROEは貸倒償却の戻しで大きく改善(全銀行5.05%、貯蓄銀行6.28%、信用組合8.39%)。但し3大銀行は▲2.26%とまだマイナス。
ちなみに、銀行全体の税前利益は2020年の128億EURから昨年は271億EURに倍増。長期平均180億EURも大きく上回った。
●営業収益のうち、金利収益65.1%、手数料収益30.0%、トレーディング収益3.9%
経費率 72.9% (うち人件費37.0%、物件費35.9%)。コストは6%増加。
ちなみに経費率は近年上昇傾向にあり、70%をなかなか割り込めていない。
ドイツはそもそも人件費が高い上、低金利、過当競争、デジタル化・当局対応・環境対応負担などが追加的な重荷となり、低収益性がドイツ銀行業界の構造問題となっている。
●去年までは金利の低下が続いていたため、利鞘(一番下の青線)も1%を切っていたが、今年はECBが金利正常化に動いているため、反転上昇が期待できる。
但し、ロシア・ウクライナ問題を基点とする景気悪化の悪影響が今後出てくるはずなので、2022年度の銀行の収益が昨年比大きく改善するかどうかは微妙な情勢。
<追記> その後英語版が出ましたのでリンクを貼っておきます。