日独経済日記

日独間の架け橋となることを目指しています

20221117 ドイツの(マクロ的な)賃金状況について

ドイツはEUの中でも賃金の高い国です。2021年の時給で比較すると、EU27カ国の平均が28.60ユーロであるのに対し、ドイツは上から7番目、37.30ユーロ(平均比3割増)となっています。

ちなみにドイツより高いのは、1位デンマーク、2位ルクセンブルク、3位スウェーデン、4位ベルギー、5位オーストリア、6位フランスです。

 

水準が高いだけでなく、ドイツの時給の伸び率(黒線)が、EU(赤線)やユーロ圏(青線)より高いことが多いというのも特徴です。

 

最近の異常な高インフレ前までは、ドイツのインフレ(黒線、消費者物価)は概ね2%以下で落ち着いて推移する一方、比較的高いドイツの生産性と労組の強い交渉力を背景に、名目賃金(青線)はほぼ常にインフレを上回り、実質賃金(赤線)プラスが維持され続けてきました。

結果としてドイツの賃金はインフレが低い割に高めの伸びが維持されてきた、ということになります。

 

ところがコロナ後(下図右側)は大荒れになっています。

コロナ直後はインフレ(黒)以上に名目賃金(青)が急減し、実質賃金(赤)も大きなマイナスとなりました。

その後は景気回復に伴って名目・実質賃金とも一時的に急回復したのですが、それ以上にインフレが上がってしまったため、最近は名目賃金は結構上げたにも関わらず、実質賃金が再び大きなマイナスに陥っています。

https://www.destatis.de/DE/Presse/Pressemitteilungen/2022/08/PD22_361_62321.html

 

ドイツの中核労組IGメタル(製造業最大)が1年8%の賃上げを求めて最近強気のストを繰り返しているのは、この実質賃金目減りを少しでも埋め合わせるためです。

 

IGメタルがカバーする金属・電機業界では、コロナ後ずっと一時金のみの賃上げで済ませてきましたので、IGメタルは今回は本気で賃上げを狙いに来ています。

Metall- und Elektroindustrie - Statistisches Bundesamt (destatis.de)

 

もう一つの中核労組verdi (サービス業最大)の賃金交渉が来年初から始まりますが、こちらも10.5%+一時金500ユーロ以上という非常に強硬な賃上げ要求になる模様です。

 

なお、ドイツ5大研の中長期予測(秋季合同経済予測報告)によると、マクロ的平均値でみて賃金は今後2年間5-6%上昇するものと覚悟しておく必要があるようです。

良い人材を確保しようと思ったら、当然この平均値よりも高いオファーが必要になるものと思われます。