日独経済日記

「毎日がうまくいく366のヒント」の訳者:今のドイツのリアルをお届けします

20260303 ドイツ外交の難しさを象徴するメルツ首相訪米

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【今回のポイント】
・メルツ訪米ではウクライナや関税よりイランがメインに
・中東の戦争が欧州〜アジアの主要貨物ルートを直撃
・SAP、相次ぐ幹部入れ替えで株価はピーク比4割下落

  1. メルツ首相訪米:
     メルツ首相の訪米は、ドイツ外交の難しさを象徴。欧州が世界政治の周縁に追いやられているという印象を払拭しつつ、米国との関係が依然「友好」と呼べるのかを見極めるという二重の課題に直面。とくに、米国が全世界に15%の関税を課す新政策を発動し、さらにイラン情勢へと関心を移す中で、欧州が重視するウクライナ問題の優先度が下がっている点は大きな懸念材料となっている。
     一方、メルツは訪米直前に北京を訪れ、強硬な権力政治を進める中国の姿勢と、ドイツ経済への圧力を改めて実感した。中国依存を減らす「デリスキング」は不可避だが、それは同時に米国への依存度を高めることを意味し、戦略的なバランスは一段と難しくなる。米国側は貿易と安全保障を巧みに結びつける交渉スタイルを取っており、ドイツが主体的に立ち回る余地は限られる。
     こうした状況の中で、メルツの任務は「ミッション・インポッシブル」とでも言える複雑さを帯びている。今後24時間の動きが、ドイツ外交の立ち位置を占う重要な試金石となるだろう。

  2. 航空貨物問題: 
     中東での戦闘拡大により、欧州とアジアを結ぶ航空貨物の大動脈が大きく混乱している。イラン周辺の広い空域が危険地域となり、ドバイやアブダビなど主要ハブ空港は攻撃の影響で機能不全に陥った。これを受け、ルフトハンザやスイス航空を含む多くの航空会社が中東便を停止し、欧州発着の貨物輸送は大幅な迂回を余儀なくされている。南回りルートなどの代替経路は安全性を確保する一方で、飛行距離の増加により燃料費が上昇し、運航コストも跳ね上がる。輸送時間の延長はサプライチェーン全体に遅延リスクをもたらし、製造業や物流企業にとっては新たな不確実性となっている。一方で、競合の運休によって一部の貨物航空会社が相対的に有利な状況に立つ可能性も指摘される。中東情勢が長期化すれば、航空貨物市場はさらなる混乱に直面し、企業は調達・物流戦略の見直しを迫られる。

  3. SAPの株価低迷
     SAPの株価低迷が続いている。時価総額ではまだかろうじてシーメンスを上回り、DAX40の中でトップを維持しているが、株価はピークから4割下落している(下図)。トップマネジメントの不安定さと戦略実行力への疑念が重なり、市場の信頼が揺らいでいることがその背景。
     今回の取締役会再編では、CEOクリスチャン・クラインが営業部門の責任を手放し、AI 戦略に専念する一方で、顧客関連業務を統合した新部門「Customer Value Group」を新設し、その全権をトーマス・ザウアーエッシヒに委ねるという大きな権限移譲を断行。組織の効率化と顧客価値の最大化を狙った動きながら、近年取締役会の構造や担当領域が繰り返し変更されており、「また組織が変わるのか」という社内外の不安を高めている。さらに、プロダクト開発担当のムハンマド・アラムが退任予定であることも明らかになり、技術部門の継続性への懸念も浮上。
     投資家の目には、幹部の離脱や組織再編の連続は「戦略迷走中の企業」と映りやすく、AI への集中という前向きなメッセージが十分に評価されにくい状況。 

    【関連動画】DAX40の基礎知識を解説

    youtu.be

【今夕のひとこと】
>ドイツは原油とガスの多くをノルウェー、オランダ、米国、カザフなどから調達しており、供給懸念は小さいが、インフレ要因として要警戒 — 独ハンデルスブラット紙

【ドイツ関連日本語記事】

www.newsdigest.de

【ドイツ経済直近断面】

note.com

【ドイツ駐在サバイバルノウハウ集】

dateno.hatenablog.com

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