日独経済日記

日独間の架け橋となることを目指しています

20240726 ドイツの気になるデータ5選(GDPナウキャスト、電車遅延統計など)

①ifoCAST(GDPナウキャスト)~Q2は前期比▲0.17%、Q3同▲0.96%と極めて低調。次回発表は8/7。

 

 https://www.ifo.de/en/ifoCAST


Indeedオンライン求人数~景気低迷の長期化を素直に反映して、じりじり減少が続いている。中長期的・構造的人手不足は深刻なので、安易に人切りしない一方、高くつく新規採用には慎重化。

https://www.dashboard-deutschland.de/comparative-analysis/pulsmesser_wirtschaft

 

ドイツ鉄道の列車遅延度合い~6月は長距離列車は半分くらいしか定刻通りに(6分以内は許容しても52.9%)運行していなかった。目標の70%には遠く及ばない。ICEでは4割、ECでは6割程度が定刻通りの運航。欧州選手権で観光客に醜態をさらした格好。ちなみにドイツ鉄道では、1時間以上の遅延で25%、2時間以上で50%の切符代が取り戻せる。

https://www.deutschebahn.com/de/konzern/konzernprofil/zahlen_fakten/puenktlichkeitswerte-6878476

www.zugfinder.net

 

④ユーロ円(為替レート)~年初来の上昇トレンドも168円あたりのネックラインも明確に下抜けし、強いトレンドは(いったん)終了。当面は170円台の戻り売り圧力が強そうで、165~170のレンジか。

https://tradingeconomics.com/eurjpy:cur

★本邦企業の社内想定レートは155円近傍なので、まだかなりの距離あり。

https://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2021/tka2406.pdf

 

⑤商業用不動産~「炭鉱のカナリア」銘柄(ドイツファンドブリーフ銀行)株価は最近の全体的な株下落局面でも小じっかり。Q1決算も含めて、特段きな臭さは感じられない(但し不良債権比率は上昇)。

https://www.finanzen.net/aktien/pbb-aktie

www.helaba.de/blueprint/servlet/resource/blob/kundenresearch/646880/ab3602efa9caf6e2ae23e0f45208852c/credit-emittentenprofil-deutschland-20240725-data.pdf

 

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20240725 対ドイツIMF4条協議報告のエッセンス

www.imf.org

先日(7/15)完了したドイツに対するIMF4条協議の結果のエッセンスは以下の通り:

  • ドイツ経済はウクライナ危機後のエネルギーショックから回復し始めている。
  • エネルギー節約のインセンティブを維持しながら所得支援を提供するなど、ドイツ政府は適切かつ強力な政策対応を実施した。
  • 節約努力と新たなエネルギー供給の確保に向けた措置により、ガス価格はより正常なレベルに戻った。
  • 今年も緩やかな景気回復が続く見込み。賃金上昇率がインフレ率を上回っていることから、2024年は民間消費が景気回復を牽引するはず。
  • 成長軌道への回帰で自信が深まれば、ECBの金融緩和と相まって、来年の消費と投資をさらに押し上げることになりそう。
  • エネルギー価格の低下が小売価格に転嫁され続け、インフレはゆっくりと低下し続ける見込み。但し、コアインフレ率は強い賃金上昇により高めに留まる。
  • 生産性の大幅上昇や予想を大幅に上回る移民でもない限り、ドイツの潜在成長率は1%未満に減速する。
  • 急速な人口高齢化により、年金と医療費も大幅に増加する見込み。
  • ドイツの経済見通しに対するリスクは概ね上下均衡
  • 上振れリスクとしては、良い経済ニュースが続いて、消費と投資が予想以上に強く出ること。
  • 下振れリスクとしては、地経学的分断の加速、世界的紛争の悪化、世界の商業用不動産(CRE)市場におけるストレスの激化の可能性が挙げられる。
  • 投資、生産性、労働力供給の拡大により潜在成長率を強化するための追加改革を奨励
  • 交通、エネルギー、通信、その他の重要分野のインフラのアップグレードを支援するため、もっと公共投資が必要
  • 公共投資の増加は、対外収支均衡、生産性と潜在成長率の向上、グリーン化とデジタル化の支援にも役立つ。
  • 高齢化と防衛関連の支出圧力の高まりを考慮すると、年金改革、環境に有害な補助金の削減などによってさらなる財政余地を生み出すべき。
  • 債務ブレーキのおかげで、ドイツは今後の財政出動余地を確保できている。その余地をうまく活かして欲しい。
  • 潜在成長率をさらに押し上げるため、ドイツ政府は、官僚主義の削減、デジタル化とイノベーションの促進、資本市場同盟に向けた前進を含む欧州単一市場の深化に向けた努力を継続するべき。
  • また、移民の統合強化や女性のフルタイム労働市場参加のさらなる促進など、労働力供給の強化に向けた継続的な努力を奨励(育児・介護サービスへのアクセス拡大や、夫婦2人目の稼ぎ手に対する実効限界税率の引き下げなどが有効)。
  • ドイツの金融(銀行・保険)システムは強固な資本と流動性を備えており、依然として強靭。但し、商業用不動産リスクは引き続き要警戒
  • 金融犯罪対策機関設立や実質的所有者透明性登録簿のデータ品質の向上など、AML/CFT 枠組みを強化する取り組みを歓迎。2022年のFSAP勧告の実施を奨励。
  • 気候変動問題におけるドイツの主導的役割は称賛に値する。但し、野心的な目標を達成するにはさらなる努力が必要。
  • ドイツには、世界の課題解決のための多国間協力において引き続きリーダーシップを発揮し、自由貿易政策とルールに基づく多国間貿易体制を推進していって欲しい。


【IMF4条協議とは】

IMF協定第4条の規定に基づき、IMFは加盟国と通常毎年協議を行う。 IMF職員の代表団が協議相手国を訪問し、経済や金融の情報を収集するとともに、その国の経済状況や経済政策について政府当局と協議する。

 

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20240725 ドイツの気になるデータ5選(ifo景況指数など)

①ifo景況指数~市場が恐れていた以上の低下。現況指数(黒)も切り下がっており、統計の下駄の大きなマイナスと併せて考えると、今年通年+0.3%成長(コンセンサス)の達成は難しそうな感触。ECB利下げの追い風。

https://www.ifo.de/en/facts/2024-07-25/ifo-business-climate-index-declines-july-2024

 

②ifo景況指数景気サイクル図~リセッション領域(第3象限)にドップリ漬かっており、当面ここから脱けだすのは難しそう。回復に向かうにしても秋以降か。

 

③ifo業種別ヒートマップ~相対的にマシとされるサービス業も勢いを失いつある。好調業種(一番下の図の赤色部分)は19:石油精製と30:その他輸送機器(恐らくエアバス)の二つのみ。

 

https://www.ifo.de/sites/default/files/secure/umfragen-gsk/ku-202407/ifo-business-climate-heatmap-20240725.pdf

 

④建設受注(5月)~前月比フラット/前年同月比+1.1%と低水準ながらも下げ止まりの兆し。ECB利下げ(インフレ沈静化+長短金利低下)で回復に向かうかどうかに注目。

https://www.destatis.de/DE/Presse/Pressemitteilungen/2024/07/PD24_285_441.html

 

⑤インフルエンザ流行度合い~週あたり新規感染率4.4%(下図赤線:うちコロナ分は0.8%と上昇)、足元、呼吸器系疾患患者数370万人と引き続き高水準、こうやってなかなか病欠が減らないこともドイツ経済の足を引っ張っている。

https://influenza.rki.de/Wochenberichte/2023_2024/2024-29.pdf

 

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20240724 ドイツの気になるデータ5選(総合PMI、GfK消費者センチメントなど)

①総合PMI~50割れで四半期GDPナウキャスト換算でQ3は前期比▲0.4%を示唆。サービス業は小じっかりながら、製造業の不振は秋まで続きそうな感触。通年GDPの+0.2~0.3%というコンセンサス到達も難しくなりつつある。

 


https://www.pmi.spglobal.com/Public/Home/PressRelease/393e17289afb49f1a30ff530cae08134

 

②GfK消費者センチメント(7月)~市場予想以上に大きく改善。製造業の不振を横目に、サービス業は比較的堅調であることを示唆(上記PMIやドイツ連銀7月月報の分析とも整合的)。インフレを大きく上回る賃上げ継続を背景に、特に所得期待が大幅に上昇(8.2⇒19.7)。景気見通し(2.5⇒9.8)や購買意欲(▲13.0⇒▲8.4)も改善。

 

https://www.gfk.com/de/presse/konsumklima-im-aufwind-nur-ein-kurzzeitiges-aufflackern

 

~ドイツ連銀7月月報でも、製造業は期待外れな一方、サービス業は堅調と評価。

dateno.hatenablog.com

 

EU域外向け輸出(6月)~前月比▲2.6%/前年同月比▲4.5%と期待外れの低迷。前年同月比ベースで、対米▲6.2%、対中▲9.9%、対日▲6.2%。

https://www.destatis.de/DE/Presse/Pressemitteilungen/2024/07/PD24_283_51.html

 

PPI(6月)~前月比+0.2%/前年同月比▲1.6%。エネルギーのベーシス効果(前年同月比押し下げ方向)主導のディスインフレ圧力は一巡しつつある。

https://www.destatis.de/DE/Presse/Pressemitteilungen/2024/07/PD24_279_61241.html

 

⑤トランプ対ハリス~ドイツにとっても一大事の本件。大分接戦になってきた。

テキストの画像のようです

www.realclearpolling.com

 

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20240723 ドイツの気になるデータ5選(市場センチメント、輸出期待など)

①ドイツ連銀週次経済活動指数(WAI)〜四半期GDP前期比換算で+0.7%まで上昇。他の各種景気先行指数が不振な中、これだけ好調が目立つ。電力消費、物流量、クレカ利用などのリアルタイム指標(下表)は意外と強い模様。

https://www.bundesbank.de/de/statistiken/konjunktur-und-preise/woechentlicher-aktivitaetsindex

 

②SENTIX市場センチメント〜株(日米欧とも)は強気/弱気度合い(上)でみると既にかなり弱気に傾いているが、買われ過ぎ/売られ過ぎ度合い(下)でみるとまだまだ売られ過ぎ状態にない⇒続落のリスク大/押し目買い出動にはまだ早そう

 https://www.sentix.de 

 

③PMI輸出期待(6月)~これまで回復基調にあったが、6月は50.8と前月の51.9から反落。地域別では欧州向け、産業別では自動車が不振。輸出の回復はやや期待外れな展開となっている。

https://www.pmi.spglobal.com/Public/Home/PressRelease/0e934533da634dd3be459e1509deed7d

 

④政党別支持率極左ポピュリスト政党BSW(濃い紫)が7.9%まで支持を増やしている。極右AfD(青)とあわせると24.6%で、国民の4分の1(左派Linkeまで入れると3割)が中道でないということになる。ショルツ政権与党の支持率合計は31.1%と低迷継続。

 

https://dawum.de/Bundestag/

 

米大統領選支持率(ドイツやEUにとっても一大事)~ハリス(水色)がトランプ(赤色)を猛追開始。ハリスの党内支持は固まりつつあるので、次の焦点はハリスの弱点を補って激戦州でも票が集められるような副大統領候補の選抜か。政策面ではトランプの経済政策の矛盾を突きつつ、中絶問題を前面に押し出す(女性の支持拡大を狙う)模様。

 


https://www.realclearpolling.com/betting-odds/2024/president

 

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20240722 ドイツ連銀7月月報経済分析部分のエッセンス

 

Kurzbericht: Konjunkturlage | Deutsche Bundesbank

本日発表されたドイツ連銀7月月報の「Kurzbericht」部分のエッセンスは以下の通り:

 

  • ドイツ経済回復への期待は最近の統計の弱さで裏切られている。
  • 第2四半期のGDPはわずかな増加にとどまり、第3四半期はやや加速と予想。
  • 足元の景気の走りは、6月時点の想定(下添)を下回っている。

    dateno.hatenablog.com

  • 製造業の受注(下)と生産(上)は予想外の低迷が続き、期待外れ(但し、車とエネルギー集約型産業は善戦)。
  • サービスや個人消費についてのQ2のデータはまだほとんど出ていないが、サーベイ類(例えば下添サービス業PMI)を見る限り比較的しっかりしており、ドイツ経済を支えている。

  • 経済の低迷と移民の増加により、雇用者数(左)と失業率(右)の両方が上昇している。先行指標(IAB、ifo)はこのような状態の継続を示唆。
  • エネルギー価格は最近やや上昇。ベーシス効果のお陰で前年同月比は上昇しにくくなっているものの、インフレは今後これ以上あまり下がらない見込み

  • 労働市場は依然として稼働率が高く、賃金の伸びは旺盛で、物価は特にサービス部門で大幅に上昇している。インフレリスクは供給サイドでも幅を利かせている。
  • このため、追加利下げの可能性については、現在のデータに照らして慎重に検討する必要がある。

【関連のご参考①】ドイツのHICPは、前月比+0.3%が続いても、ベーシス効果のお陰で前年同月比は当面横ばいに見える(オレンジ色の線)。


【関連のご参考②】ドイツ連銀のナーゲル総裁はECB理事会メンバーの中で最もタカ的人物の一人。ドイツ人はとにかくインフレと放漫財政が大嫌い

https://www.itcmarkets.com/hawk-dove-cheat-sheet-2/#post/0

 

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<ドイツ経済特集>

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20240722 バイデン 大統領選撤退についてのドイツメディアの報道ぶり

https://www.realclearpolling.com/betting-odds/2024/president

バイデン米大統領(81)が、大統領選の選挙戦から撤退し、後継者にハリス副大統領(59)を推薦する考えを表明したことについての、ドイツメディアの報道ぶりは以下の通り:

  • バイデン氏のXでの声明文「民主党や国にとっては私が選挙戦から退き大統領としての残りの任期のまっとうに集中することが最良だと信じている」「私はことしの民主党の候補者としてカマラ・ハリス氏を全面的に支持し、推薦したいと思う。民主党員よ、今こそ団結してトランプ氏を打ち負かす時だ。」
  • 後継がこのまま自動的にハリス氏に決まるわけではないので、何らかの「透明かつ秩序ある」選抜プロセスを経ることになる。
  • その際、他の有力候補が相応に支持を集め、民主党が分裂状態に陥るリスクがある。民主党チャンスと同じくらい多くの危険を抱えている。
  • ハリスの弱点:2019年の自身の大統領選挙キャンペーンの失敗副大統領としての実績の乏しさ。自国の有権者ですら説得できず、選挙運動を組織することもできない人物が、どうやって米国全体を説得し、指導できるのか?と不安視されている。
  • ハリス氏は59歳と若く、民主党の世代交代のきっかけとなる。また、78歳のトランプ氏に対しても若さをアピールできる。
  • バイデンもトランプも絶対イヤだという層が約2割いる。ハリス氏が今後、これらの層や女性、黒人の間で支持を増やせれば、トランプに勝てる可能性はある。
  • ハリス氏は人気や実績に乏しいとされているが、副大統領として不人気な移民問題に対処していたためという部分が大きい。
  • もともとエネルギッシュで弁の立つ辣腕弁護士であり、今回の選挙戦ではバイデンの弱みをうまく補完し、活躍してきた。
  • バイデン撤退表明後、民主党の小口献金はさっそく急増している。
  • 土壇場で立候補を断念することによって、バイデンは多くの民主党議員が落選し、トランプが上下両院の過半数を支配するような事態を回避しようとした。
  • バイデンの存在は、米国・欧州の両方にとって大きな幸運だった。そして今回の彼の英断は、民主主義に対する彼の最も重要な貢献になりつつある。
  • 完全に自発的な撤退ではなかったかもしれないが、それが正しいことだという事実には変わりない。
  • インフレや経済に関するトランプの公約には一貫性がなく、矛盾も見られる。ハリスがその矛盾を突き、所得再分配を掲げて中低所得者層(無党派層)を取り込みにかかる可能性が高い。
  • 民主党陣営が団結し、一貫性のある政策、多様性、若さなどをうまくアピールできれば民主党の巻き返しのチャンスは大きくなるだろう。
  • 副大統領候補にはハリスの弱点を補い、激戦州で票を集められる人物を据えることが極めて重要。
  • 共和党陣営は、このままボロボロのバイデンと闘えれば楽勝、と思っていたが、その代案が所詮実績も人気もないハリスならこれまた楽勝、と考えている模様(冒頭グラフは引き続きトランプ楽勝を示唆)。
  • 米国の歴史上、指名大会の4週間前と選挙の3か月強前に候補者が辞任したことは一度もなかった。米大統領選挙史上前代未聞の展開であり、市場としても反応に窮する/荒れやすい展開になりそう。


●ARDライブブログ~トランプ2.0を誰よりも恐れるドイツでは米大統領選への関心が極めて高い。

www.tagesschau.de

 

●主要ドイツ紙の今朝の一面トップ(掲載が間に合わなかった新聞もある)。

 

 


   

 

<日本語報道例>

www.bloomberg.co.jp

www3.nhk.or.jp

 

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