日独経済日記

日独間の架け橋となることを目指しています

20230225 ドイツで多発するATM爆破強盗に関する続報

 

ドイツではATMを爆破して現金を奪うという大胆な組織犯罪が後を絶たない、ということについては当ブログで何度もご紹介してきましたが。。。。

20221228 ドイツでなかなかなくならない「爆破ATM荒らし」 - 日独経済日記

20211226 ドイツではATM爆破による現金強奪が後を絶ちません - 日独経済日記

 

私が愛読している地元有力紙ライニッシェポストに興味深い記事があったのでご紹介します。

https://rp-online.de/nrw/staedte/geldern/automatensprengung-verlieren-gefaerbte-geldscheine-ihren-wert_aid-85480031

 

これによると、最近のATMには以下二つの防御策が施されているようです。

 

①カラーカートリッジ

爆破されたときに紙幣に特殊なインクを付着させ、一目でそれと判るようにして使い物にならなくする(冒頭の写真)。犯人の体に付着しても取れにくいので、その後の犯人捜査の手がかりになりうる。良く使われる色は、薄紫、緑、青、赤、黒で、角から中央に向かって独特の染み込み方をする。

 

②霧噴射システム

爆破されたときに濃霧を噴射し、犯人の視界を遮って時間を稼ぐ。爆破の場合は誰もがすぐ気づき、警察もすぐ駆けつけるので、紙幣拾い集めを断念させる効果が大きい。

 

犯人たちは、べっとり着色された紙幣でもそのまま持ち帰り、

少しでも汚れが少ないものが中に残っていないか見つけて、それを使おうとする

特殊な洗浄装置で洗ってみて(これこそ文字通りのマネーロンダリング)、多少色がおかしくなったものでも相応に気づきにくそうであれば、それを使おうとする

とのことです。

 

万一運悪くそういう紙幣をつかんでしまったら、使って他人に渡そうとするのではなく、警察に届け出ることを強くお勧めします。

 

なお、こちらの動画でもご紹介している通り、ドイツの銀行はただでさえ儲からなくて大変苦労しています。ATMが爆破されるだけでも大損害ですが、その抑止のためにインクや霧を噴射する装置への投資を強いられるとは、何とも気の毒なお話ではあります。

youtu.be

 

【追記】

公共第一放送TV(ARD)の特集番組によると、以下のような背景がある模様です。

  • ドイツでは年500件ぐらいATM爆破事件が発生し、ドイツの西側、特にNRW州が一番多い。
  • オランダに恐らく500~1000くらいの犯罪組織があり、20歳以下の若者を実行犯(1台の車、3~4人のグループ)として送り込んでくる。
  • 1回あたり10万ユーロくらいが手に入り、実行犯の若者にはその1割、1万ユーロくらいが報酬として渡されている。
  • 当初はオランダのATMが狙われていたが、オランダではATMが爆破されると紙幣が接着剤でブロックのように固まる特殊な装置の設置が法的に義務付けられ、収穫が得られなくなった。そしてそれ以降、同じ手段がまだ通用するドイツが狙われるようになった。
  • ドイツではそういった装置の設置が法的義務でないため、銀行は安上がりの保険で済ませることが多い。犯人にとっては収穫が簡単なATMがまだたくさん残っている。
  • ドイツでもこういった特殊装置の設置を法的義務にしようという動きがあるが、遅々として進んでいない。犯罪組織は法制化される前にやれるだけやっておこうということで、最近どんどん押し寄せてきている。