日本とドイツは先進国の中でも現金選好が強いことで有名ですが、
ドイツ連銀の決済専門家David Ballaschk(バラシュク)氏がWDR(ドイツ地方テレビ局)とのインタビューで現金やデジタル通貨の将来について語っている内容がなかなか興味深いので、そのエッセンスを以下ご紹介します。
- ドイツ銀行協会の2020年の調査によると、ドイツ人の大多数が現金に対して非常に強い愛着をもっている。
- 回答者の4分の3が、将来紙幣や硬貨がなくなることを望んでいない。
- 但し、30歳未満の回答者のほぼ半数は、将来的にデジタル決済のみになると覚悟している。
- 当分の間、決済取引において急激なデジタル革命が起こる可能性はなく、10年後も現金はほぼ確実に残っていると思われる。
- デジタルマネーに比べると、紙幣と硬貨のデメリットはかなり多い。生産にはコストがかかり、運搬や保存などセキュリティ面でもコストがかかる。
- 紙幣は若干不衛生であるだけでなく、通常発行から1年以内にすり減ってしまうので、流通から抜き出して廃棄する必要がある。
- 1セント硬貨鋳造には、1.65セント製造コストがかかっている。
- 現金最大のメリット兼デメリットは完全に匿名で使用できること。麻薬取引や脱税などの犯罪で多用されている。デジタルマネーであればその辺は対応可能。
- 欧州中央銀行(ECB)はずっとデジタル・ユーロ導入の可能性を検討してきたが、2023年10月にはその検討結果が発表される見込み。
- 導入は早ければ2026年にも可能。
- デジタル・ユーロが実現する場合は、現在流通しているユーロの硬貨や紙幣と同様に、「中央銀行のお金」「ECBに対する請求権」を意味するものになる。
- 中央銀行が倒産することはないので、ビットコインのような一般的な仮想通貨(暗号資産)と比較して、価値が安定した支払手段となる。
- ECBは、デジタル・ユーロ利用者の匿名性を保護したいと考えており、現在普及しているインターネット上の決済サービスよりはデータ利用にかなり強い制約がかかる見込み。
- しかし、犯罪を防止するためのデータは使えるようにするので、無制限にデータが保護されるということはない見込み。
- 高齢者、ストリートミュージシャン、ホームレスなど、現金に頼っている多くの人たちにいかに適応してもらうかもデジタル・ユーロ導入の課題。