日独経済日記

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20230713 ドイツ新「対中戦略」閣議決定についてのドイツメディアの報道ぶり

https://www.tagesschau.de/china-strategie-bundesregierung-102.pdf


ドイツ政府が本日閣議決定/発表した独自の対中戦略(①独中2国間関係、②ドイツとEUの連携強化、③国際協調の3つの観点から、約60ページで構成)についてのドイツメディアの報道ぶりは(今のところ)以下の通りです。

  • ショルツ首相:「この戦略は中国との協力の新たな枠組み。経済と気候変動に関する協力は継続する。但し過度の対中依存は要修正。」
  • ベアボック外相:「中国は変わった。私たちの対中政策も変えざるを得ない。」
  • 中国がインド太平洋地域において人権を軽視し、国際法の原則に背いていることについては明確に非難。
  • 中国の台湾侵攻リスクについても警告。ドイツ政府は「一つの中国」政策を堅持し、中国とのみ外交関係を維持しながら、台湾との関係も発展させたい。
  • 中国のスパイ活動(含むサイバー空間)に対する厳しい方針も規定。
  • ドイツに住む中国人に対する弾圧によってドイツの主権が侵害されないことも重視。
  • 対中関係における問題点とリスクを極めてオープンに分析している点は評価できる。
  • 本戦略では解釈の余地が大きく残されているため、実際の落としどころを探る努力は今後も続けなければならない。
  • 政府としては中国で誤解が生じないようにするため、文書を慎重に北京語に翻訳中
  • 現時点で中国の反応は落ち着いたもの
  • 産業界も「現実的」と歓迎。より具体的なデリスキング支援策の充実を要求
  • 緊急に必要なデリスキングをどのように実現するかについては示されていない。
  • ドイツでの生産活動のほぼ全てがサプライチェーンのどこかで中国のサプライヤーに依存している。中国との紛争が起きた場合、ドイツ経済のダメージは甚大
  • 対ロシア戦略失敗の教訓から、こうした一方的な依存関係を減らすことは急務。
  • 本戦略に法的強制力はないが、対中関係の指針として、今後各省庁がアイデアを交換し、連携するのに役立つはず。。
  • 本戦略は、外務省主導で、すべての省庁と首相府が共同で作成。
  • ショルツ政権誕生時の信号機連立(SPD+Green+FDP)の連立契約の中で、中国との関係見直しを掲げていたが、ようやく実現した格好。これだけ時間がかかったことは、いかに本件が微妙で悩ましい問題であるかの証拠。
  • 対中投資の見直しについて明確な約束、目標設定は回避
  • 中国の公正な競争環境を歪めている点についてはEUレベルでの対応が必要。政府が並行してEUレベルでの議論を進めているのは正しい。
  • 経済安全保障の観点では、中国の軍備をドイツの技術が支援するようなことがあってはならない。
  • 中国とドイツの大学での研究協力においてはより慎重になるべき。
  • 政府は、中国との取引が多いドイツ企業に対し、直ちにリスク分析を行うよう警告
  • 中国との間で地政学上の危機が発生しても、政府が経営不振に陥った企業を安易に税金で救済すべきでない。対中リスクの責任は企業にある。
  • 従ってデリスキングも一義的には各企業の責任だが、原材料パートナーシップや自由貿易協定の推進により、政策面でも企業を支援すべき。
  • デリスキング進捗状況を政府が定期的に監視する体制を確立する必要がある。 

 

●昨年のドイツとの貿易額(輸出+輸入)で中国はダントツトップを堅持(7年連続)

 

【追記】

その後のベルリン中国大使館の反応は、以下の通りかなりマイルドなものでした。

  • イデオロギーの偏見や競争不安に基づく強制的デリスキングは逆効果」
  • 「政治的相互信頼の強化を通じて二国間関係を構築する必要がある」
  • 「中国はドイツのライバルではなくパートナーだ」
  • 「ドイツが現在直面している課題の多くは中国が原因ではない」

 

<日本語報道例>

jp.reuters.com

www.nikkei.com

www3.nhk.or.jp

 

<ドイツ対中戦略関連>

note.com