1月22日に開催されたドイツ最大野党CDUの党大会でメルツ氏(66)が94.6%という高い支持を集めて新党首に選出されました(写真左、右はラシェット前党首(60))。
メルツ氏は党保守派の経済通で、党幹部の若返りを図りつつ新体制下で党勢回復を目指します。「AfD(極右)を半分切り崩す」という右傾化作戦はいったん撤回し、まず党内融和を図りつつ、トランスフォーメーション、安全保障、少子高齢化対策(特に年金)の3分野を重視しつつ建設的野党としてドイツの舵取りの一翼を担っていく方針です。日本と違ってこのように頼もしい野党があることを何とも羨ましく思います。ともすれば環境・社会的公平重視で経済軽視に走りかねない信号機連立政権のお目付け役として、ドイツの未来のために是非頑張ってほしいと思います。
メルツ氏は約20年前(2002年)、当時野党党首だったメルケル氏からライバル視され、下院議員団長ポストを奪われたため、2009年にいったん政界を引退し、ビジネス界(ドイツ証券取引所、コメルツ銀行、ブラックロック等)に身を投じました。
しかし近年、アフターメルケルを展望するCDU保守派から請われる形で政治活動を再開しました。3回CDU党首選に挑みましたが、最初の2回は新メルケル派に僅差で敗れ、今回3度目の正直でCDU党首就任を勝ち取った格好です。
メルケルにつぶされてから20年後に「奇跡のカムバック」を果たしたメルツ氏は、約95%というメルケル並みに高い賛成票に感無量の涙を浮かべていました(本人は80%超を見込んでいた模様です)。
次の焦点は下院議員団長ポスト。現在次世代のリーダーとして評価の高いブリンクハウス氏が暫定的に総選挙から6か月という任期で就任していますが、4月下旬頃にメルツ党首自身が就任することになると思われます。
こちらはドイツ主要政党別支持率状況一覧です(右端が昨秋の選挙結果)。
Wahlumfragen zur Bundestagswahl – Sonntagsfrage (Wahlumfrage, Umfragen) (wahlrecht.de)
ドイツ連邦議会はよほどのことがなければ解散されることはなく、次の選挙は約4年後になるので、現時点での支持率はあくまで「国民のざっくりとした満足度」程度にしかなりませんが、一時20%を割れていたCDU/CSUが、メルツ氏の台頭(CDU党首就任)とともに支持率を回復してきています。但し、それでもショルツ首相率いるSPDには追いつけていません。
そのショルツ首相ですが、最近「存在感が乏しい」と批判されています。
オーラフ・ショルツ - Wikipedia
もともとドイツ人としては小柄(身長170㎝)で派手さのない人ということもあるのですが、こちら(人気週刊誌シュテルン)ではバックトゥザフューチャーの主役マーティのように消えかかっていますし、
こちら(有力全国紙ヴェルト日曜版)ではウォーリーさんのように、よほどよく探さないと見つからない、と揶揄されています。
足元のドイツでは、オミクロン、インフレと並んでロシア(ウクライナ)問題が主要メディアで重視されています。特にロシア問題については、メルケル前首相がロシア語堪能でプーチン大統領からの信認厚く、節目節目で直談判に持ち込んでいたため、ドイツ国民は今回もドイツの首相がリーダーシップを発揮して何とかしてほしいと期待してしまいます。実際には妙案が全く見つからないまま、ロシアの軍事行動が日々現実味を増しており、その不満がショルツ首相に向けられてしまっているという状況です。
なお、そのメルケル元首相は、(国連など)要職への就任要請を全て固辞し、完全に隠居生活を楽しんでいるようです(左はご主人のザウァー物理化学教授)。