日独経済日記

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20211219 メルツ新党首の下で独CDUは生まれ変われるか

今年9月の連邦議会(下院)選挙で歴史的大敗を喫して野党第一党に転じたCDUは、党員投票(オンライン+郵便)の結果、次期党首としてフリードリッヒ・メルツ氏を選出しました。フリードリヒ・メルツ - Wikipedia

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CDUは16年にわたる政権与党から今回一野党に転落しましたが、4年後の選挙に向けて彼がどうやって党勢を立て直すのかに注目が集まっています。ドイツ主要メディアにおける報道ぶりをベースに私なりにまとめますと以下の通りになります(党首選圧勝も前途多難な感じ):

 

  • ほぼ20年前にメルケルに蹴落とされたメルケルのライバルが、七転び八起き的に返り咲いた。「ドイツ史上最古の奇跡的カムバック」と言える。
  • CDU党員約40万人のうち約2/3にあたる25万人という党員投票としてはかなり高い投票率の中で、1次投票で悠々と過半数を確保(メルツ62.1%、レトゲン25.8%、ブラウン12.1%)。僅差の勝利で党首になったAKKやラシェットとは異なり、メルツ氏は、党内で強い求心力を発揮できる可能性が高い。
  • CDU初の党員投票での圧勝は「(党幹部には支持が広がらないが)党員ベースに強いメルツ」という下馬評を証明した格好。党員が、メルケル(強い女)の次には「強い男」を求めていたという可能性も高い。
  • 但し、この圧勝は、主に党内保守高齢者層に支えられたものであり、党内融和を実現するためには、若手層や女性からの支持をさらに広げていく必要がある。
  • CDUが建設的野党となる(対案なき批判に終始したりしない)ことは期待できるものの、国民人気という面でメルケル氏に遠く及ばないメルツ氏が、メルケル路線(の一部)を否定しつつ国民の支持を獲得してゆくことは容易でない
  • メルツ氏は66歳と高齢かつ一昔前のエスタブリッシュメントという印象が強く、今後のドイツが必要とする新しい政治を提示できるかどうかにも不安がある。
  • メルツ氏は(現時点では否定しているものの)持ち前の保守的スタンスで極右AfDの切り崩しを図るものと思われるが、現在のAfDはほぼコア支持者で固められており、容易でない。やりすぎると党内左派の支持を失うリスクも心配。
  • CDUは他党比女性活躍面で見劣りしており、その修正には時間を要する。
  • 姉妹政党CSU党首のゼーダーとはそりが合わず(国民の人気はゼーダーの方がメルツよりやや上)、現院内総務ブリンクハウス氏との関係もやや微妙。党内キーマンとの信頼関係構築にやや不安がある。
  • 来年前半には3つの州議会選挙(ザーラント州:3/27、シュレースビッヒ=ホルシュタイン州:5/8、ノルトライン=ヴェストファーレン州:5/15)が予定されている。いずれもCDUが現在第一党として州政権を担って/州首相を輩出しているが、直近世論調査ではいずれもSPDに対して劣勢になっており、立て直しが急務。

 

 

【ご参考】日本語記事の報道例

 

①時事: 独CDU党首にメルツ氏就任へ メルケル路線転換、保守回帰

ドイツの中道右派政党、キリスト教民主同盟(CDU)は17日、新党首を選出する党員投票で、フリードリヒ・メルツ氏(66)が勝利したと発表した。来年1月21、22日に行われる党大会での代議員投票で正式決定するが、結果は覆らない見通し。メルツ氏は弁護士出身で、経済界に近い保守派。2002年の総選挙でCDUが政権奪還に失敗した後、当時党首だったメルケル前首相の要求で会派トップの院内総務の地位を追われ、メルケル氏とは確執がある脱原発などメルケル氏のリベラル色が強い政策にも批判的だった。今月に中道左派社会民主党SPD)主導の政権が誕生し、CDUが16年ぶりに野党に転落する中で、メルツ氏はメルケル路線を転換し、保守回帰を進めるとみられる。

独CDU党首にメルツ氏就任へ メルケル路線転換、保守回帰(時事通信) - Yahoo!ニュース

 

②朝日: 独最大野党、新党首にメルケル氏の元政敵 党首選「三度目の正直」

ドイツの最大野党で中道右派キリスト教民主同盟(CDU)は17日、新党首にフリードリヒ・メルツ氏(66)を選んだ。同氏は引退したメルケル前首相(67)の元政敵として知られる。ここ3年、党首選に2度挑んでいずれも敗れたが、「三度目の正直」で党トップの座を射止めた。9月の総選挙で野党に転落した党の立て直しに挑む。メルツ氏は党員投票で、約62%を得た。元環境相のノルベルト・レットゲン氏(56)、前首相府長官のヘルゲ・ブラウン氏(49)を退けた。来年1月の党大会で正式に党首に就く。新党首に指名されたメルツ氏は「CDUが21世紀の国民の政党としての役割を果たせる活力ある政党であることを示すため、全力を尽くす」と述べた。メルツ氏とレットゲン氏は今年1月の党首選にも挑み、西部ノルトラインウェストファーレン州の州首相だったアルミン・ラシェット氏(60)に敗れた。CDUはラシェット党首を選挙の顔として9月の総選挙に挑んだが、中道左派社会民主党SPD)に敗北。ラシェット氏は党首辞任を申し出た。メルツ氏は保守的な政治姿勢で知られる。CDUの連邦議会会派の議員団長を2000~02年に務めたが、リベラル寄りのメルケル氏との政争に敗れ、09年に政界から引退。弁護士として企業の取締役などを担った。メルケル氏の党首退任に伴う18年の党首選に出馬したが、前国防相のアンネグレート・クランプカレンバウアー氏(59)に敗れた。今年9月の総選挙で国政に復帰していた。(ベルリン=野島淳)

独最大野党、新党首にメルケル氏の元政敵 党首選「三度目の正直」:朝日新聞デジタル (asahi.com)