今回のロシアによるウクライナ侵攻は、ドイツでは「Putins Krieg」 ~プーチンの戦争(ロシアというより、プーチン個人の暴走による戦争)と表現されています。
コロナの年(2020年)の流行語大賞(Wort des Jahres)が「Corona Pandemie」~コロナパンデミック、とそのものでしたので、今年2022年の流行語大賞はきっとこの「Putins Krieg」がもっていくことになると思います。
プーチンは自分でネット情報など見ておらず、ごく少数の取り巻きの意見しか聞いていないとドイツでは(でも)言われています。
20兆円以上の個人資産を隠し持っているとも言われており、いざとなったらこのお金目当ての別の独裁者にかくまってもらって何とか生き延びていくつもりなのでしょう。独裁者は必ず腐敗し、独裁者に「よい独裁者」などあり得ない、ということがまたひとつ証明された格好です。
ドイツは長年にわたってプーチン大統領を「ある程度信頼できる取引相手」と見做してきました。さすがに「よい独裁者」と勘違いしていたわけではないでしょうが、安価なエネルギーを大量かつ安定的に調達するための取引相手として「そんなにひどい奴ではないはず」くらいの気持ちでお付き合いを続けてきたのだと思います。歴代ドイツ首相は、プーチン氏と特別なグリップや信頼関係を持つことをウリにしているようなところすらありました。
メルケルが去り、ドイツがカーボンニュートラルへ邁進し始め、ドイツの脱原発と脱石炭が目前に迫ったタイミングで、この「そんなにひどい奴ではないはずの独裁者」が突然ドイツに牙をむきました。エネルギー価格をスクイーズしながら「NATOを広げるのは許さん」とEUを脅し、自分の要求が通らないと見るやウクライナに「脱ナチス化」を口実にして突然攻め込んできたのです。原子力発電所も平気で砲撃しますし、核戦争の可能性すらチラつかせています。
窮地に追い込まれたドイツは、受け身で仕方なくとはいいながらも見事に豹変しました。重要なのは以下4点でしょう:
- 過去の歴史に対する反省から、紛争地域へのいかなる武器供与も認めないというスタンスに固執してきた(ウクライナにはせいぜいヘルメットくらいまでしかプレゼントしてあげられなかった)
⇒非常に高性能な対空ミサイルでも、「あくまで防衛的な武器」と位置付けてウクライナに大量に供与し始めた - どんなに米国から迫られても、ウクライナ危機が始まるまでノルトシュトリーム2(NS2)をどうするつもりか明言できなかった
⇒NS2を完全につぶすだけにとどまらず、ロシアからのエネルギー輸入を今後どんどん減らすこと(依存度縮小)を決断した - どんなにトランプから迫られても、どんなにドイツ国防軍の機材整備不足が問題になっても、国防費をGDPの2%にまで引き上げようとは決して考えようとしなかった
⇒カーボンニュートラルより優先するくらいの勢いで巨額の国防費手当(1000億ユーロの特別基金設置など)を決断した - ロシアから輸入している大量のエネルギーが急に止まると困るので、ロシアの銀行のSWIFT遮断に反対し続けてきた
⇒(決済が急に止まらないよう抜け道をつくりつつも)SWIFT遮断に同意した