日独経済日記

日独間の架け橋となることを目指しています

20220228 プーチンの核兵器使用示唆に対するドイツの見方

プーチン露大統領が「核戦力を含む軍の核抑止部隊に対し任務遂行のための高度な警戒態勢に移行するよう指示した」というニュースがドイツでも大きな話題になっています。素直に読めばロシアが核兵器使用に一歩近づいたかのように受け取れるアクションです。

米英専門家は、ロシアが核による抑止力を持つことを西側に再認識させようとしているだけで、具体的な準備ではない、と一蹴していますが、ロシアの射程圏内であるドイツに住む我々としては大いに気になるところです。

プーチン露大統領の当該指令について、ドイツ軍事専門家の間では概ね以下のように分析/コメントされています:

  • 最近のプーチン氏は冷静な判断を失っている(少数の取り巻きの意見しか聞いていない)ように見えるので、以前の同氏のイメージで安易に判断せず、今回はこちら側としても常時しっかりとした分析と対応が必要。
  • ウクライナ国境付近での直前の軍事演習でも核兵器搭載可能なミサイルシステムのテストを実施している上、「過去に例のない結果」を警告しているため、今回核兵器使用の脅しをかけてきていることは間違いない。
  • 但し、2014年のクリミア危機の時も同様の脅しを切り出してきており、西側諸国として特段の新味は感じられない。
  • プーチン氏の当初の期待とは異なり、ウクライナ侵攻は難航している。ロシア軍の主要都市攻略作戦は長期化し、兵站に不安が持たれ始めている。株価や通貨は経済制裁で既に暴落しており、ロシア側に焦りがあることは間違いない。
  • 保有国は常時核兵器使用の兆候をモニタリングしており、いざとなれば即時に反撃できる。先制攻撃者は結局自分も確実に身を亡ぼすということを皆わかっている。
  • ドイツとしては米との核シェアリングで十分な対抗抑止力を持っている。特に米最新鋭爆撃機からの攻撃能力は非常に高い。
  • NATO側としてはロシアに隣接するメンバー諸国に数千人単位の人員を再配置し、ウクライナに武器弾薬を提供しただけ。本来この程度の話で核戦争が現実味を増すことはありえず、NATO/米国側としては特段核使用警戒レベルを引き上げる必要性を感じていない。

 

ちなみにドイツ国内の軍事施設は下図のような分布になっており、ロシアが万一核ミサイルをドイツに打ち込もうとする場合には、首都ベルリンとこれらの軍事施設を狙ってくるものと思われます。

  

 Ausländische Militärbasen in Deutschland – Wikipedia