マクロプルーデンスが気になる局面では、四半期ごとに出るこちらのBIS四半期報告書が頼りになります(金融安定報告の類は年一度くらいしか出てくれませんので)。
FXを中心としたトレードの基礎データも満載されており、手元資料として大変便利です(こちら↓のpdfを是非お手元に)。
https://www.bis.org/publ/qtrpdf/r_qt2212.pdf
BIS Quarterly Review, December 2022
マクロプルーデンス上の当面のメインテーマは「各国中銀のインフレとの戦いのゆくえ(景気減速/インバート、流動性低下/金融システム内の軋み、伸びきった財政、社会不安/地政学リスク、地球温暖化対策等との兼ね合い)」であることは間違いないと思います。
そのような状況下で今後(来年)の金融市場を展望するにあたって、今知っておいて悪くなさそうなポイント(あくまで私見ですが)を以下ざっとご紹介します。
●ターミナルレート接近でUSD高は一服したものの(左図)、年末越えファンディングはかなりタイト(右図、EURやJPYの対ドルベーシス高水準)。
●UKの年金は債券のシェア高く(B図)長期債利回り急騰は大打撃(右図)。オランダの年金もそれを見て大慌てで流動性積み上げ(右図)。
●リセッション懸念大の欧州のクレジットスプレッドが過去平均比で見てもワイド
(左図、青系統線)。
米スプレッドはアウトプットGAPやデフォルトリスクと整合的(B・C図)。
●急速に進む金融引き締めを背景に、米国でもユーロ圏でも債券発行激減(左図)。金融環境は米国(赤)で最近やや緩和気味も、概ねタイト化。
●OTCデリバ取引量は3年前(前回調査)比二割減(左図)。Libor廃止でドルのFRAが消滅したため(B・C図)。
●グローバルFX取引は1日7.5兆ドル(1000兆円強、日本のGDPの約2倍の規模感)と順調に拡大(左図)。スポットのシェアが減って、スワップとフォワードのシェア増加(B図)。長らく続いていた対顧↑/ディーラー間↓が逆流(右図)。
●FXスワップは1週間以内の非常に短いものが大半(B図)。フォワードは3ヶ月くらいまでのものが多い(右図)。
●米国の貿易やGDPと比べると、各種金融取引にしめるドルのシェアは引き続き圧倒的ながら(左図)、外貨準備に占めるドルのシェアは低下トレンド(右図)。
●電子取引(青系統)が過半ながら、ボイス取引(赤系統)もなかなか根強い(左図)。
●青部分がオンショア居住者間取引。UKで約3割と意外に多い。マレーシア・リンギット、ブルガリア・レフ、アルゼンチン・ペソ、UAE・ディルハムはオンショアが過半。
●人民元取引は1日5260億ドル(72兆円相当)まで急増中(左図)。日中変動幅も拡大傾向(右図)。
●EM通貨の取引量はGDP比相対的に小さいことが多い(例外はHKドルとシンガポールドル)。
●通貨別のFX取引特徴(左端列)一覧。
●FX取引決済量規模感
★外準に占める通貨別シェアはこちらのIMFサイトで確認できます。
(2022年6月末時点:ドル60%、ユーロ20%、円5%、ポンド5%、人民元3%等)
Currency Composition of Official Foreign Exchange Reserve - At a Glance - IMF Data
<同報告書日本語報道例>~最後の章だけちょっと採り上げていますが、ここだけしか見ないのは大変もったいないと思います。上記グラフ集を是非(トレード用の)お手元に。
「見えない」65兆ドル、デリバティブ債務が危機対応を困難に-BIS - Bloomberg