日独経済日記

日独間の架け橋となることを目指しています

20230518 ECBによる利上げ影響度分析

 

ECBから、2021年12月以降の一連の金融政策正常化のマクロ経済に対する影響の分析結果が発表されています。ECBがイメージしている利上げインパクトの規模感をつかむのに使えるので、そのエッセンスを簡単にまとめておきます。

www.ecb.europa.eu

 

  • これまで実施されてきたECBの金融政策の正常化は、2023年から2025年にかけて実質GDPを大きく減速させ、インフレ率を相応に押し下げる。
  • 今回の一連の金融政策正常化の影響はまだ十分に現れ切っておらず、今後の人々のインフレ期待の変化などにも左右される。
  • 金融政策変更⇒イールドカーブ変化⇒マクロ経済への影響、というステップでモデルを使って分析。 
  • これまでの金融政策変更によって、2025年の短期金利は2.77%、足元の10年物金利は2.28%押し上げられた。 



  • 金融政策の実際の軌道と、3ヶ月毎のイールド/フォワードカーブ断面:
    ~昨年末くらいから、ECBはあと50bp(0.25%×2回)利上げするという市場織込みが定着している。

  • 下図Bは、HICP(左)と実質GDP(右)に対する3つのモデルの計算結果とその平均値(緑丸に注目)を示す。
  • インフレ下押し効果の大半は 2023 年以降に発現。昨年は▲0.5%程度HICPを下押し。2023~2025年で均すと約▲2%ポイント。但しその推定値は3つのモデル間で大きく異なる(ECBは小さめの評価)。
  • 実質GDPへの下押し効果は下図右の通りインフレより早く顕在化。下押しインパクトは2023年にピーク(▲4%程度)に達し、2022~2025年平均で▲2%ポイント