ドイツ政府は、大麻の限定的合法化の具体的計画を発表しました。
【追記】その後閣議決定され、日本でも以下のように報じられています。
8月18日時点でのオンライン世論調査(Civey、1400人)によると、絶対反対:44%、どちらかと言えば反対:6.7%と、反対派が過半数を占めています。
過去の経緯、計画概要、メディアの反応を以下に整理しておきます。
<これまでの経緯>
- ドイツでは2017年から医療目的に限って大麻が合法化されていた。
- 2021年末のショルツ政権発足時に、大麻合法化(成人の娯楽目的用大麻の流通・消費の規制付き解禁)は連立協定の中に盛り込まれた。
- 当初案では、個人消費目的の20~30gの大麻取得・保持許容、大麻草の制限付き自家栽培許容、特別消費税導入、関連教育・乱用防止プログラム導入、などが計画されていた。
- 大麻合法化は闇市場対策の決定打であり、うまくいけば、年27億EUR程度の増収、経費節減(警察の負担軽減)、新規雇用創出(販売店舗網出現)につながる可能性があると期待されていた。
- ただ、その実現にはEU欧州委員会の審査・承認が必要なため、計画の日程的なめどは示されていなかった。
<今回発表された政府案概要>
- 当初想定していたもの(上記)から大きく変容した内容の2段階方式。
- 第一段階:①成人に対して、25グラムまでの大麻所持、自家消費用大麻草3本までの栽培を許可。②非営利クラブ(会員最大500人)に対して、自家栽培大麻製品の供給を許可(量や成分の制限付き)。
- 第二段階:大麻製品の商業サプライチェーンを、地域のモデルプロジェクトとして5年間かけて確立。
- 大麻製品の一般的自由販売は当面回避。EU法をクリアできなかったため。
<ドイツメディアの報道ぶり>
- 今回の政府計画は当初案と大きく異なっているが、消費者の非犯罪化、より安全な大麻製品供給、闇市撲滅、青少年保護強化などの効果は期待できそう。
- 一方、薬局業界団体からは、健康リスクを心配する声や、薬局で他の医薬品などと娯楽用大麻を同時に扱うことへの困惑や反発が出ている。
- 野党第一党CDU/CSUは、個人の所持量が25グラム/栽培が3本以下かどうかや、非営利クラブの大麻製品の品質・量・販売を管理することは実務上非常に困難で、闇市をかえって拡大させてしまうと批判。EUレベルでしっかり調整の上、21歳以上に限定して、薬局などの認可店舗で調剤・販売することを提案。
- 政府案はいかにも中途半端。ドイツでは昔から大麻は日常生活の一部。少量の使用で課金されることもなく、やりたい人、やれる人は自分で栽培し、それ以外の人は近くにあるオランダへ行く。完全に合法化・自由化した方がずっと簡単。
- 政府は市民の自己責任に期待しているのだろうが、対象が麻薬ではコントロールうまく効かないだろう。
- 非営利クラブ方式であれば、営利を目的としないのでぼったくり販売にならず、品質や顧客の管理(子供などの排除や教育)もある程度は可能だろうが、闇市の撲滅には力不足。
- CSU党首であるSöder氏は、地元バイエルン州だけでも大麻合法化を阻止する意向。
- 経費節減と税収増をあわせた経済メリットは年11億ユーロとの試算あり(全面的自由化の場合は年47億ユーロ)。