本日ケルン研(IW)よりドイツ企業の対中直接投資に関する分析レポートが発表されたので、そのエッセンスを抽出しておきます。
- ドイツからの対中直接投資は2021年末時点で1026億ユーロ(対外直投全体に占めるシェアは7.2%)<ご参考:日本は2021年末、中国16兆円、香港4兆円>。
- 昨年は推計115億ユーロの追加投資があったため、2022年末時点での直投残高は1140億ユーロとなっているはず。
<対中直接投資年次フロー>
- 直近2年は、毎年100億ユーロ超が対中直投に投下されているが、現地で上げた利益の再投資(上図黄土色部分)によるものが大半。近年は撤退(茶色部分:持分売却)も相応に出ている。
- ドイツ経済は中国に深く依存しているが、これまでのところその依存度引き下げのための努力はほとんど行われていない。
- 米中対立は激化しており、中国の台湾侵攻も現実味を帯びている。EU全体としても過度の対中依存に警告している。
- 独中間に貿易障壁が発生した際の経済損失の規模感はGDPの1%程度であり、それほど大きいわけではない。
- ドイツの全雇用のうち中国向け輸出に直接/間接に依存しているのはわずか約3%で、製造業でも6%未満。
- 近年、対中貿易は大きな赤字となっている。中国からの輸入が急激に増加する一方、ドイツから中国への輸出はほとんど増えていない。
- レアアース、一部の医薬品・化学原料は、ほぼすべて中国由来。
- こういった対中依存の高いサプライチェーンでは、代替品確保や、調達先多様化などにより依存度を引き下げる必要がある。
- ドイツには中国との貿易を数年かけて段階的に削減する体力と余裕があるはず。
<関連参考動画>
https://youtu.be/b6O6M-eLvwM?t=625