日独経済日記

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20240105 昨年の排出量大幅減についてのドイツメディアの報道ぶり

Illustration: Eine Hand dreht einen CO2-Regler an einem Globus.

昨日、気候変動対応関連シンクタンク「Agora Energiewende」が昨年のドイツのCO2排出量について以下の内容の調査レポートを発表しました。

  • 2023年のドイツ温室効果ガス排出量は、推計6億7,300 万トン。
  • 1990年(基準年)比46% 減少。1950 年代以来の最低レベル。
  • 気候保護法に基づく年間目標7億2,200万トンを約4,900万トン下回る。
  • 主因1)石炭火力発電が1960年代以来の最低レベルに低下。
    4,400万トン削減に寄与。電力需要の大幅な減少、近隣諸国からの電力輸入の増加(その約半分は再生可能エネルギーによるもの)/電力輸出の減少、グリーン電力の発電量増加、がその背景。
  • 主因2)産業からの排出量大幅減。
    エネルギー多消費型企業の生産低迷(前年比▲11%)がその背景。
  • www.agora-energiewende.de

 

この調査結果発表に対するドイツメディアの報道ぶりは以下の通りです:

  • ハーベック経済相は、再エネ(特に太陽光と風力)の拡大が順調に進んでいる成果だと主張。単なる景気低迷のおかげだとする主張に反論。
  • 2030年までにあと約2億トンも減らさないといけないので、この程度で全く安心はできない(大きな『気候保護ギャップ』が残存)。
  • 特に輸送や建物の分野で、まだほとんど何の対策も講じられていないことがとても心配。政府は直ちに本格着手する必要がある。
  • 予算違憲判決で気候変動対策資金が足りなくなっているが、そこで節約してEU目標が達成できず、高額の罰金を科せられるとすれば非常に愚かな判断。気候変動対策関連投資は最優先で断行すべし。
  • 政府年間目標達成の一部は、グリーンエネルギーの輸入など海外への依存によるもの。
  • 電力輸入の約4分の1が原子力発電によるもの。昨年4月に無理やり実施した脱原発は完全に間違っていたのではないか。
  • 高いCO2価格を通じた経済的インセンティブでCO2削減を進めることは大事だが、それでドイツ企業がどんどん海外に移転してしまうなら、ドイツでは減って見えても地球全体としてのCO2は減らず、ドイツ経済が低迷するだけで終わる。
  • 昨年の排出量減少の半分は経済低迷によるもので、ドイツ政府の経済運営失敗のお陰という何とも皮肉な結果。持続可能な削減とはとても言えない。
  • 総額約184億ユーロに達した排出権関連の国庫収入(+40%)が唯一の朗報。

 

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