先ほどドイツの5月雇用統計が発表され、季調済失業者数は前月比+25千人と、市場予想(+9~10千人)より弱め。景気の先行き好転の兆しが出始めているものの、景気遅行指標としての雇用は年末年始の景気低迷を反映して軟化しているイメージ。但し、後述の通り、就業者数は増え続けているので、雇用全体として決して弱いわけではない。
●失業率<国内基準>~5.9%で横ばい。2022年以降の失業率上昇の大半は2022年6月からのウクライナ難民カウント開始によるもの。連邦雇用庁は「経済低迷の割にしっかり」との評価継続。
https://tradingeconomics.com/germany/unemployment-rate
<以下◆4つはドイツ連邦雇用庁月報より抽出したもの>
◆就業者数~じりじりと上昇を続け、毎月過去最高水準を更新している(季調後、1か月遅れ、4月前月比+25千/3月+9千/2月+18千人)。実質賃金の上昇と併せて、本来は強力な個人消費下支え要因だが、消費者はまだ慎重。6月の欧州選手権でドイツ代表が大活躍すれば消費着火の起爆剤になるかもと期待されている。
◆操短~3月219千人(2月200千/1月189千人)と、低水準ではあるものの増加基調。今後の人切りの予兆として要警戒。
◆求人数~新規流入(下線)がじりじり減少する中、求人残高(上)も低下トレンド継続。コロナ前をやや下回る水準。
◆失業率<国際労働機関(ILO)ベース>~ドイツは3.2%と最近やや悪化傾向にあるものの、他国比ではかなりの優等生ぶり(EU内では引き続き下から5番目、EU平均は6.0%)。
ILOベース(3月)の国際比較では、日本2.6%、ドイツ3.2%、米国3.4%。
●ifo雇用バロメータ~総合指数はやや改善も、全体としてはまだまだ弱め。強気なのはサービス業(観光業中心)のみ。
https://www.ifo.de/en/facts/2024-05-29/ifo-employment-barometer-rises-may-2024
●IAB労働市場バロメータ~こちらは最近の改善傾向を否定する大きめの悪化(上記ifoと共にドイツ当局が最も重視する雇用先行指標)。総合指数(青)が久々の100割れ。新規求人需要が減って、不況業種から染み出た失業(橙)者にとってはスキルもマッチしづらくて厳しいが、人手不足は続いているので既存の雇用(緑)はしっかり維持されているというバランスは継続。
https://iab.de/daten/iab-arbeitsmarktbarometer/
●IAB人手不足度指数~水準はほぼコロナ前と同じ、不景気の割に人手不足感が根強いと言えるが、上記指数と同様に大きめの反落(人手不足感はやや緩和)。
https://iab.de/daten/arbeitskraefteknappheits-index-3/
★こういった人手不足の主因は「少子高齢化の進展に伴う団塊世代の大量退職」ではあるもののの、週労働時間の突出した短さ(下図)もその一因。
【補記】●総合PMI雇用~回復基調継続。ドイツ雇用市場が予想以上に軟化する可能性は低いと思われる。
https://www.pmi.spglobal.com/Public/Home/PressRelease/9aaba5521d7141e1b5a90595ec323329
<日本語報道例>
<日独経済日記>