ドイツの6月雇用統計では、季調済失業者数は前月比+19千人と、市場予想(+15~20千人)並み。各種景気先行指標の回復が腰折れし始めている中、景気遅行指標としての雇用の軟化が長期化しそうな気配。但し、後述の通り、高水準の賃上げを続けながら就業者数は増え続けているので、雇用環境全体として決して弱いわけではない。
●失業率<国内基準>~6.0%と0.1%上昇。2022年以降の失業率上昇の大半は2022年6月からのウクライナ難民カウント開始によるものだが、基調が悪化方向であることは確か。連邦雇用庁は「景気回復がなかなか進まないので雇用も冴えない」とやや苛立っている。
https://tradingeconomics.com/germany/unemployment-rate
<以下◆4つはドイツ連邦雇用庁月報より抽出したもの>
◆就業者数~じりじりと上昇を続け、毎月過去最高水準を更新している(季調後、1か月遅れ、5月前月比+20千/4月+26千/3月+9千/2月+18千人)。実質賃金の上昇と併せて、本来は強力な個人消費下支え要因となるはずだが、消費者信頼感に見る購買意欲はまだまだ低い。欧州サッカー選手権でドイツ代表が順調に勝ち進んでいるので、決勝くらいにまで行けば消費着火の起爆剤になるかもと期待されている。
◆操短~4月242千人(3月223千/2月101千人)と、増加基調が鮮明化。今後の人切りの予兆として要警戒。
◆求人数~新規流入(下線)がじりじり減少する中、求人残高(上)も低下トレンド継続。水準としてもコロナ前を下回り続けている。
◆失業率<国際労働機関(ILO)ベース>~ドイツは3.3%と最近やや悪化傾向にあるものの、他国比ではかなりの優等生ぶり(EU内では下から4番目、EU平均は6.0%)。
●ifo雇用バロメータ~弱含み推移継続。強気なのはサービス業(主に観光業、IT、コンサル)のみ。
https://www.ifo.de/fakten/2024-06-26/ifo-beschaeftigungsbarometer-leicht-gefallen-juni-2024
●IAB労働市場バロメータ~こちらもifo同様弱含み推移継続(両者はドイツ当局が最も重視する雇用先行指標)。新規求人需要が減って、不況業種から染み出た失業(橙)者にとってはスキルもマッチしづらくて厳しいが、人手不足は続いているので既存の雇用(緑)はしっかり維持されているという微妙なバランスが継続。
https://iab.de/daten/iab-arbeitsmarktbarometer/
●IAB人手不足度指数~水準はほぼコロナ前と同じ、不景気の割に人手不足感が根強いという状況が続いている。
https://iab.de/daten/arbeitskraefteknappheits-index/
●Indeed日次オンライン求人数~上記の公式求人数同様、減少基調継続。失業者にとってはますます厳しい状況になっている。
https://www.dashboard-deutschland.de/comparative-analysis/pulsmesser_wirtschaft
●ドイツ連銀の見立て~失業者数は今年いっぱいくらいは上昇を続け、その後緩やかに減少に向かう。企業が新規採用に慎重なこともあり、一人当たり労働時間はじりじり増える。
<賃金交渉動向>
<日独経済日記>