ドイツのインフレ率(2番目の図)はとんでもなく高いのに、お隣のドイツ語圏スイスのインフレ率(最初の図)はなぜこんなに低いのか。
今回はそんな疑問にお答えしたいと思います。
①強い為替レート/低い輸入物価
ユーロスイスのレートはこの2年間、特にインフレが加速し始めた昨年後半から結構切り下がっています。
スイスフランは対ユーロで、2020年末比+10.3%、昨年末比+5.6%のフラン高となっています。
また、ドイツの10月輸入物価は前年同月比+29.8%に対し、スイスの輸入物価は7.7%にとどまっています。
②低い化石燃料依存度
スイスの電力は、水力(青+薄青)と原子力(黄)が大半で、ガス、石油、石炭に頼る部分がほとんどありません(2021年)。
Der Schweizer Strommix - Schweizer Strommix (kernenergie.ch)
一方のドイツの電力では、再エネ(風力:25.7%、太陽光11.2%、バイオマス5.7%、水力3.2%)と原子力(6.0%)で半分を占めるものの、残り半分は石炭(31.4%)、天然ガス(11.7%)に依存しています(2022年前半)。
Strommix 2022: Kohle nimmt deutlich zu - StromAuskunft
スイスは化石燃料にほどんど依存しないため、エネルギー価格高騰による影響が非常に小さく、コアへの波及も小さくて済んでいます。
コアCPIは+1.8%と非常に落ち着いています(ドイツでは+5%に加速)。
③そもそも高い物価水準
スイスは物価水準がそもそも非常に高いことで有名です。英エコノミスト誌のビッグマックインデックスでも世界トップの常連です。
ビッグマック平価でスイスフランはユーロ比40%も割高(フランが強すぎる)という評価になっています。
The Big Mac index | The Economist
2021年のスイスの一人当たりGDPは、ドイツの42,527ドル(日本は35,278ドル)に対して、88,224ドルと2倍以上となっています。
スイスは物価がそもそも最初から高く、通貨高もあって上がりにくい上、所得水準が極めて高いため、今回のグローバルインフレ局面を主導しているエネルギーや食料価格の値上がりから相対的に影響を受けにくいので、インフレが落ち着いている、ということになります。
<ご参考:両国CPIのウェート>
①スイス
~ドイツと比べると、
家賃+光熱費(26.6% vs 32.5%)と娯楽(6.8% vs 11.%)のウェート低目
ヘルスケア(16.7% vs 4.6%)と飲食費(12.6% vs 9.7%)が高目
②ドイツ