日独経済日記

日独間の架け橋となることを目指しています

20230213 ベルリン州(特別市)議会やり直し選挙結果について

得票率は、①CDU28.2%、②SPD18.4%、③Green18.4%、④Linke(左派党)12.2%、⑤AfD(極右)9.1%、⑥FDP4.6%の着地となり、10%以上得票率を伸ばした野党CDUの圧勝(ほぼ一人勝ち)となりました。

 

最終議席配分結果は以下の通り(全159議席過半数80議席)となりました。
FDPは5%状況による足切り議席を失っています。

 

投票率は63.01%とやや低調。連邦議会選挙と重なった2021年9月の75.35%は特別としても、2016年の66.89%を大きく下回りました。

 

過半数を確保できる連立組み合わせ3つがいずれも不人気(左側の「支持しない」が優勢)となっており、連立交渉は相当難航することが予想されます。

現与党の赤緑赤(SPD+Green+Linke)は、SPDが第2党に転落した上、今回の選挙で大きく支持を失っているものの、左派的傾向が強いベルリン市民にとっては一番マシな組み合わせに見えているようです。

大勝して第一党となったCDUとしては当然州首相(市長)を輩出したいところなのですが、SPDもGreenも今のところCDUとの連立交渉にはきわめて腰が引けています。

多くの識者が「CDU支持の民意がこれだけ明白なのだから、CDU主導の連立政権を樹立すべき」と主張しているものの、赤緑赤で十分な過半数(100議席)が維持できているため、どちらに転んでもおかしくない状況です。


【追記】その後(2/28時点で)、選挙結果的には最も自然なCDUとSPDの連立になる可能性が高まりました。

https://www.deutschlandfunk.de/giffey-will-der-berliner-spd-eine-koalition-mit-der-cdu-vorschlagen-100.html

 

<現政権与党敗北の背景>

  • 暴徒(大半が外国人貧困層)が警察と救助隊員を花火などで攻撃した大晦日の事件とその後の州政府の甘い対応は、ドイツの全国レベルでも大問題となっている。
  • その他、家賃急騰、交通政策や教育政策に対する怒りなど、ベルリン市民のフラストレーションは明白に高まっていた。
  • ベルリン市民が強く変化を望み、右寄りのCDUへの支持が集まった格好。

 

<各党に対するインプリケーションなど>

  • SPD
    得票率18.4%は、1950 年以来最低(2021 年: 21.4%)。
    得票数がGreenをわずかに(たった105票!⇒その後開票漏れ票分を修正したところ、53票に!)上回って第2党となったため、赤緑赤連立政権を維持しつつ、ギファイ州首相が続投できる可能性はまだ残っている。
    但し今回ギファイ氏は選挙区で落選(比例復活)で極めて立場が弱い。
    ショルツ首相(SPD)にとって首都ベルリンでの大敗はダメージ大。特にCDU政権誕生となれば、今回の選挙の反省を国政にも反映せざるを得なくなる。

  • Green
    前回とほぼ同じ得票率18.4%の確保には基本的に満足。
    赤緑赤現連立政権の継続を望んでいるように見える。
    市中央のフリードリッヒ通りからの車排除などの政策は市民からあまり支持されておらず、見直す必要ありそう。

  • Linke(左派党)
    同党は全独ベースでは5%前後の支持率で低迷しており、ベルリンでの12.2%は大善戦であり、さらに政権にも参画できるようならこれ以上のことはない。
    政権参画が唯一可能となる赤緑赤現連立政権の継続を望んでいる。

 ~ここまでが現与党~

 

  • CDU
    首都ベルリンでの大勝は、CDUとメルツ党首にとって完璧なスタート(今年最初の州選挙なので)。
    連邦政府の与党信号機連合に対する不信任投票としてアピールする方針。
    第一党の座を久しぶりに奪回したものの(下添グラフご参照)、ベルリンにおけるSPD・Greenとの政策の隔たりは非常に大きい。連立パートナーを見つけられなければ、結局野党のままに終わってしまうリスクもある(【追記】上記の通り、その後そのリスクは大幅低下)。

  • FDP
    5%条項抵触で議席喪失。
    本来のFDPらしさ(経済・自由競争・財政規律重視)をより強く発揮する必要に迫られるため、連邦政府内の対立イシュー(原発再開、インフラ整備など)でより強硬化する可能性あり。

  • AfD
    得票率は前回の8.0%から今回9.1%に上昇。
    ベルリンおよび連邦のAfDは、これまでの抗議路線が支持された結果と高く評価。
    但し、特段躍進したわけでもないので、全独政局への影響は軽微。

 

<今回の再選挙実施に至る背景>

  • 2021年9月に実施された前回選挙は、連邦議会選など複数の投票とベルリン・マラソンが重なったことに加え、新型コロナウイルス感染防止策に手間取ったため、投票用紙が不足し、投票が規定の時間内に終わらず開票速報が流れ始めた後も続くなど、大混乱となった。
  • 2022年11月、憲法裁判所は、選挙準備の重大なミスによって人々の投票機会が失われて各党の議席獲得に影響を与えた、と結論付け、選挙のやり直しを命じた。
  • その結果、約1年半前と同じ候補者が争う異例のやり直し選挙が今回実施された(極めて慎重に準備したため、今回の運営はトラブルなくスムーズだった)。

CDUが第一党となるのは1999年以来。

 

ちなみに、今年あと3つの州議会選挙が以下の日程で予定されています。ショルツ政権に対する間接的評価(中間ラップ)としても注目されています。

・5/14(日)ブレーメン、10/8(日)バイエルンヘッセン

 

<本件日本語報道例>

mainichi.jp