日独経済日記

日独間の架け橋となることを目指しています

20220515 NRW州議会選でもCDUが勝利、ショルツ首相には痛手

終結果判明は翌朝になりますが、20時時点で大勢が決している模様なのでコメントしておきます。

ノルトライン=ヴェストファーレン(NRW)州はドイツで人口最大の州であり、中央政府にとって常に重要な地方選と位置付けられています。SPDがCDUに大差での敗北を喫したため、ショルツ首相とSPDにとっては予想以上の痛手となる一方、先週のSH州議会選に続いて、CDUとGreenには追い風となりました。但し、相場にはあまり影響はないと思います。

 

【得票率】

  • CDUは事前の世論調査(30%程度)を上回る35%超の票を獲得。第二党のSPDに約8%もの差をつけての大勝。ただし前回(2017年)との比較では約3%のゲインに留まる。
  • SPDは、事前の世論調査通りの着地で得票率27%(前回比▲4%)どまり。若者を中心にかなりの票がGreenに流れた模様。
  • Greenは得票を前回比+12%と大きく伸ばし、18%を獲得。SH州に続いてキングメーカーとしての地位を確保。
  • 州政府連立ジュニアパートナーのFDPは今回最大の敗者。前回比7%超を失い、5%条項をギリギリクリアできる水準にまで後退。
  • AfD(極右)も5%条項を辛うじてクリア。左派党は議席ゼロ。




【今回のCDU勝利の立役者、ブスト州首相(46)】~ラシェットの後任

 

 ヘンドリック・ブスト - Wikipedia

 

 

【獲得議席数と連立の行方】

  • 過半数100(全199)議席。第一党CDU(77)と第二党SPD(58)による大連立は他にオプションがなくなった時にしか成立しないため、現実的な選択肢は
    ①CDU+Greenと②SPD+Green+FDPの2つ。
  • 民意を重視するなら黒緑(キウイとも)。CDU+Green=117議席過半数+17)で十分安定的政権運営が可能。
  • ブスト州首相は「CDU政権樹立が強い民意」「経済と環境の両立という難しい課題に全力を注ぎたい」として、早速Greenに連立交渉をもちかける意向。
  • SPD(特に中央幹部)とFDPとしては、SPDが第二党にとどまったとはいえ、中央政権同様の信号機連立(SPD+Green+FDP)の組成が可能(110議席過半数+10)であるため、その可能性の追求を熱望している。
  • CDUがSPDに大差をつけて第一党になっただけでなく、信号機連立の構成要素であるSPDとFDPがともに得票率を大きく落としていることの意味は大きい。SPDには政権組成をリードする大義名分がなく、民意は明らかに黒緑にあるため、黒緑で決着する可能性が高そう。

 

州政府メンバーで構成されるドイツ上院(Bundesrat)計69票の中で、NRW州は6票の重みがあり、これをCDU(黒)からSPD(赤)にひっくり返す意義は非常に大きい(過半数確保が非常に楽になる)ため、SPDの一部(例えばクリングバイル共同党首、キューナート幹事長など)は「是が非でもショルツ政権と同じ信号機連立に持ち込みたい」と考えている模様ですが、この選挙結果ではかなり厳しいと思います。

但し、今後の連立交渉でGreenがゴネてCDUとの連立交渉が行き詰まるような兆候がないかについては要注視です。

 

なお、最近のGreenの健闘/躍進の背景に、ベアボック環境相とハーベック経済相の高い人気があるということは間違いなさそうです。