今年最大のドイツ賃金交渉である、公務員セクター(対象239万人:バス運転手、公衆浴場従業員、消防士、看護師、老人看護師、行政職員、下水処理作業員、林業従事者、医師など)が4月22日の仲裁初日に以下内容で妥結しました。
①当初の労組要求:1年+10.5%、但し最低月500EUR。
②今回の妥結内容:2年(1年目一時金3,000EUR、2年目実質+11.5%)
<②の詳細>
- 協定期間は2023年初から2024年末までの24か月
- 2023/6:一時金1,240EUR
- 2023/7-2024/2(8か月):一時金月220EUR (9か月累計3,000EUR)
- 2024/3-2024/12(8か月):+5.5%+月200EUR(但し最低月340EUR)
⇒この期間は今の賃金比で実質的に+11.5%(労組主張)
労組側にとっては「(後ずれするものの)賃金を11.5%引き上げることに成功した」と言えますし、雇用者側にとっては、今年の賃金水準を極力抑え、2年間はストを回避することに成功した、と言える内容です。
なお、ドイツの賃上げはこのように期間と段階を複雑に組み合わせた妥結となることが多いので、年●%の賃上げと単純に表現することができません。
月給3000EUR(年収36000EUR)を前提にざっくり計算すると、実質ベースで、
昨年年収比、今年+7.1%、来年+11.4%(来年の年収は今年比+4.0%)となります。
もともとマクロベースで今年、来年とも賃金が5%前後上昇することが見込まれていますので、労使双方にとって受入れ可能な妥結内容になっているのではないかと思います。仲裁委員はさすがにその道のプロだけあって、実にいい感じの提案をひねり出してきたわけです。
但し、市町村の追加コストは2年間で170億ユーロ(2.5兆円相当)とされており、市町村として我慢できるぎりぎりのところだった模様です(連邦政府の追加コストは49.5億EUR/7300億円相当)。
<マクロベース>
直近4大研の予測によると、一人当たり賃金は今年+5.7%、来年+5.5%(時給は今年+5.9%、来年+4.4%、協約賃金ベースでは今年+4.9%、来年+4.7%)となっています。
<本件関連ご参考>
<労使交渉全体感>