ドイツ鉄道の労働組合(EVG、対象18万人)は、ドイツ鉄道との賃金団体交渉における仲裁人の決定を受け入れることを決定しました。
労働協約の主なポイントは次のとおりです。
- 2023年10月:2,850ユーロのインフレ補償一時金支払い
- 2023年12月:月200ユーロの昇給開始
- 2024年8月:月210ユーロの追加昇給開始
- 協定期間:25ヶ月(2023年3月1日~2025年3月31日)
2年以上にわたる段階的な賃上げですので、日本の春闘のように「年●%のベアで妥結」という単純な計算はできませんが、ドイツ鉄道の年棒水準は
運転手 :44,000~52,500ユーロ
車両整備:36,000~54,500ユーロ
線路整備:37,000~47,000ユーロ
乗務員 :37,000~50,000ユーロ
車内食堂:33,500~40,500ユーロ
ということなので、超ざっくりと月給の平均を
と4,000ユーロ(年収48,000ユーロ)と置くと(保守的計算のため気持ち高め)、
★今回の妥結による増額分合計:2,850+200x8+410x8=7,730ユーロ
⇒1か月あたり309ユーロ ⇒ 月給水準が7.7%切り上がった
というくらいのイメージ(恐らくやや低めの見積もり)かと思います。
(非常に乱暴な計算であることはご了承ください)
<ドイツメディアの評価例>
- 今回の非常に高価な妥結は、当事者だけでなくすべての人に影響を及ぼすことになる。ドイツ鉄道は決して経営状況が良いわけではないので今後運賃引き上げでコスト(推計13億ユーロ~約2000億円)を回収しようとするはずだ。
- 今回の合意で今後ストライキがなくなったわけではない。別の残りの小規模鉄道労組GDLは、もっと良い労働協約を近々締結したいと考えている(今年11月から交渉開始)。
- 組合員の仲裁受入れ賛成票が52.3%と予想外に少なかったことから、今後の組合運営は結構厳しいものになるかも知れない。
●ちなみにドイツの名目賃金(下図赤棒)は足元急上昇しており、今年第1四半(1-3月)期は前年比+5.6%、第2四半期は+6.6%となっています。ようやく実質賃金がプラス(0.1%)に浮上しましたのでここからは個人消費の下支え役となることが期待できます。
<今年のドイツ賃金交渉情勢一覧表>
<ドイツ経済の足元のエッセンス集>