今年何度も大規模ストが繰り返され、難航してきたドイツ鉄道労使交渉が、仲裁裁定により妥結に向かう可能性が高まりましたので速報します。
【労組(EVG)の当初要求】
- +12%(但し最低月650ユーロ)の賃上げ。
- 協約期間12カ月。
【今回の仲裁提案~組合員投票賛成多数で妥結する可能性大】
- 今年10月に2,850ユーロの(インフレ対策)一時金支給。
- 今年12月から月200ユーロ賃上げ。来年8月から追加で月210ユーロ賃上げ。
- 協約期間25カ月(2025年3月末まで)。
<ドイツメディアの報道ぶり>
- 仲裁人は労使双方がギリギリ受け入れ可能な非常に良い提案をひねり出した。
- 労組(EVG)の組合員は今後の投票で賛同する可能性が高く、少なくとも当面(今年の夏休みの間)は鉄道ストを心配しなくてすみそう。
- 但し、鉄道運転士組合(GDL)との労使交渉がまだ残っている。同労組も強硬な要求を突き付けて来るものと予想され、鉄道ストのリスクは完全には消えていない。
- すでに赤字に陥っているドイツ鉄道にとって、仲裁決定に伴うコストは巨額の追加負担を意味する。
- 仲裁者が言う通り「ドイツ鉄道にとって過去最大の賃上げ」となることは間違いない。
- しかし、他にいいアイデアは見当たらない。ストが繰り返されればもっと高くついたはず。
- ストに対する国民の怒りが労使双方に対して仲裁案受入れの背中を押したはず。
- 歴史上最も高い賃金協定を勝ち取れそうなので、労組は明確な勝者とみなすことができる。
- 一方、25か月という長期にわたる労働協約は、ドイツ鉄道にとって大きな成果。
- ドイツ鉄道としては、今後の料金値上げを回避できそうにないので、最終的には本件コストのかなりの部分が運賃上昇を通じた鉄道利用者負担となる。
- 鉄道労使は、人員不足を軽減するために新たな労働時間モデルを模索したいと考えている。これによって列車遅延問題が少しは改善することを祈る。
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<今年の賃金交渉(妥結)状況一覧>
最近は(1年ではなく)2年くらいの長期にわたり、一時金を絡めて多段階で遅れ気味に賃上げするものが多く、要求通り単純に「年●%」と評価できるようなものはないが、概ね今年、来年とも実質で+5%を上回る高めの妥結となっている。