今年のドイツ賃金交渉における最初のヤマ場である、金属・電気業界(対象300万人超)での団体交渉において、労組(IGメタル)が7月9日に交渉方針を正式に表明した。ポイントは以下の通り:
- 協定期間12カ月で+7%のベースアップを要求。
- 職業訓練生には月額170ユーロの賃上げを要求。物価高騰を受け職業訓練生の3分の1が副業を余儀なくされている現状を改めたい。
- 週休3日制など、労働時間削減は前面に出さず、賃上げ(組合員の約7割が切望)を最優先。
- インフレ率は低下したものの、食品価格や家賃は高止まりしていて生活苦は改善しれおらず、この程度のベア要求は妥当と強調。
- 賃上げによる購買力強化は、GDPの半分を占める個人消費の押上げを通じて経済回復にも寄与するはず。
- 現行協定は2022年11月に締結され、今年9月末までのもの。2023年6月に+5.2%、2024年5月に+3.3%の賃上げ+インフレ調整一時金(免税)3,000ユーロ(2分割)。
- 10月28日までに妥結できなければ、警告ストライキを実施する可能性がある。
★昨年来、名目賃金(赤)はかなり上昇(+6%ペース)しているので、昨年後半からインフレ(黒)差し引き後の実質賃金(青)はプラスに転じているが、労組は2022~23年に失われた実質所得(マイナスの青棒部分)を取り返すべく、今回も高い賃上げ(+6%程度)の実現を目指している。
https://www.destatis.de/DE/Presse/Pressemitteilungen/2024/05/PD24_211_62321.html
★賃上げのマクロ的イメージ~ドイツでは昨年・今年と+6%くらいの賃上げが続く見込み(黒:残業などを含む実質ベース、青:労使協定ベース)。
★ドイツの労組の全体感~IGメタルは(ver.diと並んで)ドイツ最大/最重要の労組。
<本件関連データ>
<本件関連のドイツ人専門家による日本語論文例>
<日独経済日記>
<ドイツニュースダイジェスト連載コラム>