8月のドイツ連銀月報の経済分析のエッセンスは以下の通り:
- 世界経済は緩やかな成長とマイルドなディスインフレを継続。
- 米国では景気後退懸念と利下げ期待が急浮上。株価は一時急落したがその後落ち着き。
- ECBは6月に利下げを開始したが、将来の利下げ軌道を約束するものではなく、利下げは今後のデータ次第。
- ユーロ圏のM3は急回復。
- ドイツ経済は4-6月期予想外にマイナス成長に転落。投資、輸出、消費が弱い。
- 化学などこれまで極度に低調だったエネルギー集約型産業は(エネルギー価格の正常化に伴い)急回復しているが、製造業(下図左)/建設業(右)は受注不足に直面している。
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その結果、生産活動は製造業(下図左)/建設業(右)とも以前下向き。
- 7月の製造業設備稼働率は77.5%と長期平均を▲6%下回る水準。
- 個人消費は実質所得が大きく増加した割にまだ予想外に弱い。消費者センチメントでは貯蓄性向が高止まりする一方で購買意欲低迷が継続(ドイツ銀行の分析によると、消費者が米国と違って将来の不安をなかなか払拭できないため)。
- (シニア世代の大量退職に伴う構造的人手不足を背景に)雇用は堅調で(下図左)、労組は過去の分を取り戻すための強気な賃上げ要求を続けており、当面高賃上げは続く見込み。
- 名目賃金は1-3月期前年比+6%。
- インフレは年末に向けて(目先の低下が続くのではなく)じり高となる可能性が高い。
- 実質賃金の上昇で個人消費は今後多少は上向きそうだが、輸出と投資は弱いままの可能性が高く、ドイツ経済の回復は予想より遅れ気味。
- 7-9月期の実質GDPも低迷する可能性がある。
- 今年、来年と財政赤字の縮小が続くが、緊縮財政ではなく、各種危機対策の期限切れによるもの。2025年の財政赤字はGDPの▲2%以下へ。
- ドイツ鉄道への支援(極度に老朽化した鉄道インフラ整備)は補助金ではなく資本投入の形をとるべき。
- 債務ブレーキは債務比率が60%を切っている間は少し緩和してもよい。
<日本語報道例>