アルゼンチン大統領選で、ドル化/中銀廃止や歳出大幅削減などを主張するリバタリアン(自称:無政府至上主義者)のアウトサイダー、ハビエル・ミレイ氏が勝利したことに対するドイツメディアの(当確直後の現時点での)報道ぶりは以下の通りです。
- 56%対44%という大差での勝利はサプライズ。ミレイ氏の正式就任は12月10日。
- ダークホースを最終的に当選させた原動力は、アルゼンチン人の怒りと失望。特に若者から支持を集めた(アルゼンチンでは16歳から投票できる)。
- アルゼンチンでは、20年以上にわたって左翼ペロン派が政権を握り、国家が経済に大規模な介入を行い、公共サービスには多額の補助金が出され、多くの地方では民間部門よりも公共部門で働く労働者の方が多くなった。
- 140%にも及ぶインフレのため、かつては豊かだったこの国の国民の約4割が貧困ライン以下での暮らしを強いられている。
- アルゼンチン経済は、政府の肥大化、低い生産性、国家から多くの税収を奪う大規模なシャドーエコノミーに苦しめられている。
- 通貨ペソの価値は下がり続け、借金の山も増え続けている。
- ミレイは、これらの問題に対する大胆(かつ一見簡単そう)な解決策を提示した。
- 大半の省庁を廃止し、米ドルを法定通貨として導入し、社会保障支出を大幅に削減し、国有企業を民営化したいと考えている。
- 髪を振り乱し、チェーンソーを振りかざした彼は「チェーンソーを使って」公共支出に大ナタを振るうのだと主張している。
- 他には、銃所有の自由化/同性婚/臓器売買に賛成、中絶の権利/気候変動対策/共産主義に反対。
- アルゼンチンは資源大国であり、農作物、牛肉、リチウム、銅、原油などの国際市場に影響を及ぼす可能性がある。また同国はクリーンエネルギーへの転換に必要なリチウム生産で最も急速な成長を遂げている。
- 「20年あればドイツみたいになれる。35年待てばアメリカみたいになる。」とテレビ討論会で国民に約束していた。
- しかしミレイは議会で多数を占めておらず、彼の陣営には州知事がおらず、重要な要職に就く資格のある人材も不足しており、政策の遂行体制が脆弱。
- 一方、彼の政敵: 左翼ペロニストは、労働組合、社会運動、党組織を通じて、小さな地域社会までよく組織化されており、抗議行動でいつでもアルゼンチン全体を麻痺させることができる。前途は多難と言わざるを得ない。
- 多くの専門家はこの国の統治能力を懸念している。ミレイ氏の急進的な公約、とりわけ自国通貨ペソの廃止と米ドルの導入が実現可能だと信じている経済学者はほとんどいない(外貨準備が少なすぎて強硬は大変危険)。
- 彼に最も大きな希望を抱いていた人々こそが、最終的には最大の敗者となるだろう。
- トランプ前米大統領は「あなたは国を変革し、アルゼンチンを再び偉大にするだろう。」と手放しの称賛。
- ブラジルのシルバ大統領(左派)は「新政府の幸運と成功を祈る。アルゼンチンは偉大な国であり、すべてを受けるに値する。」と距離感ある祝辞。
- ミレイ氏の当選により、アルゼンチンの二大貿易相手国ブラジル(左派)と中国(共産主義)にはマイナスとなる可能性がある。
- 公約した政策が大混乱を引き起こす可能性が高く、先行きが全く不透明な中、ドイツへの影響については、明確な見通しが持てない。
<追記>その後通貨ペソには強烈なショートカバーが入っている模様
<日本語報道例>
<ドイツメディアの多角的分析を紹介>
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