昨日のトルコ大統領選決選投票で現職のエルドアン大統領が52対48で再選(任期5年)を果たしたことについてのドイツメディアでの報道ぶりは以下の通りです。
- ショルツ首相は「ドイツとトルコは緊密なパートナー・同盟国であり、社会的、経済的にも強い結びつきがある」「今後共通の課題解決を新たな活力で推し進めたい」とドイツとトルコの協力関係を賞賛し、エルドアンの再選を祝福した。
- その他各国首脳もエルドアンにすかさず祝辞を伝えた。EU内の異端児ハンガリーのオルバン首相やアフガニスタンのタリバンからも祝辞が寄せられた。
- 20年もの間、首相・大統領に君臨しているエルドアンは、民族主義者、イスラム主義者、保守主義者の支持を集めてますます権威主義化している。
- トルコの野党を始め、多くの人々がトルコの民主主義解体、一層の独裁政権化を恐れている。
- EU最大の頭痛の種は、トルコが妨害し続けているスウェーデンNATO加盟問題。
- トルコで強権的政権運営が今後も続くことが確定したため、トルコのEU加盟交渉をもう完全に打ち切るべきだという声も上がっている。
【追記】ドイツ国民の77%が交渉打ち切りに賛同(うち61%は強く賛同)。
- トルコは軍事戦略的に非常に重要な位置にあるため、特にウクライナ戦争の文脈ではトルコと何とかうまく付き合っていくしかない。
- 選挙戦は明らかに不公平なものだった。エルドアン大統領はメディアの統制に加えて、国家資源も活用することができた。
- 国際的選挙監視団は、不公正な選挙運動と投票の透明性の欠如を批判した。選挙作業員やオブザーバーへの攻撃など、数多くの不正・混乱の報告があったが、選挙結果は変わらなかった。
- 選挙での勝利後、「ドイツ語、フランス語、英語の新聞は私を転覆させようとしたが見事に失敗した」などとエルドアンは外国メディアを非難した。
- エルドアンが終身支配を確保するための憲法改正を進める可能性は否定できない。
- トルコとの関係においてドイツとEUは新たな氷河期に入ったと思っておいた方が良い。エルドアンは依然として、西側諸国にとって全く予測不可能な絶望的民族主義者である。
- ドイツから投票したトルコ人の3分の2がエルドアン支持。選挙前後にドイツ各地で大騒ぎを繰りかえし(上写真)、一部で顰蹙を買った。
- 英エコノミスト誌は「民主主義を修復する10年間で最高のチャンスが失われた」と表現している。
- 「金利の敵」を自称して中央銀行に利上げを許さないエルドアン体制長期化で、インフレ(現在44%)収束も期待薄。通貨リラもますます売られている。
<日本語報道例>