日独経済日記

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20230512 もしトルコ大統領選でエルドアンが負けたら

 

今週日曜(5月14日)にはトルコ大統領選挙が実施されます。ロシアが支援する現職エルドアンと、西側寄りのクルチダルオール候補の戦いであり、今年世界で最も重要な選挙とも言われています。

 

大統領候補の直近の支持率を見ると、クルチダルオール(橙)のリードが明確化してきています。他の野党候補インセ氏の突然の撤退により、その支持率数パーセント(緑)がクルチダルオール氏にシフトするため、「5月28日の決選投票なしでエルドアン(青)の敗退が決まる可能性も出てきています。

 

ここ数日間のドイツおよび他の欧州諸国のメディアでの報道ぶりは以下の通りです。

  • 専制主義的なエルドアン大統領は、トルコで20年間権力を振るってきたが、最近の数年間は人気を失い、ギリギリ何とか権力を維持してきた。
  • 今度の選挙で民主主義的なクルチダルオール氏に敗北し、エルドアンは退陣に追い込まれる可能性が高まってきた
  • 但し、僅差の場合に選挙結果を簡単に認めないなど、混乱が生じる可能性はある。
  • トルコで政権交代となれば、スウェーデンNATO加盟が実現し、欧州人権裁判所の判決はトルコでも尊重されるようになる。トルコとEU/米国との緊迫した関係も改善されよう。
  • しかしトルコと欧米の関係は複雑であり、良くなるとは限らない。クルチダルオールは基本的にエルドアンの外交方針を踏襲する(ロシアにも西側にも味方しない)と言っている。
  • トルコのロシア産エネルギーに対する依存度は引き続き非常に高い。新政権が反ロシアになるなどと期待してはいけない。
  • 両候補とも約400万人のトルコ在住シリア難民をシリアに送り返そうとしているので、どちらが勝ってもそのシリア難民EUに逃げ込もうとする可能性が高い。その結果、EUの難民問題は一層深刻化する。
  • エルドアン下では簡単に拒絶できたトルコのEU加盟問題が再浮上する可能性がある。すべてのEU加盟国がそれを喜べるわけではなく、ブラッセルの負担は大きくなる。
  • トルコの民主化がしっかり進むようなら、EUとしても新たなトルコをを受け入れる努力を再開すべきである。

 

<トルコ国外での投票状況>

2018年の前回選挙では、ドイツで投票したトルコ人(全有権者の2%強)の約65.1%がAKP/エルドアン(黄)に投票し、全体の結果(53.5%)を大きく上回っていました。フランス、オランダなど、労働者階級のトルコ人が多い欧州近隣諸国では同様の傾向となっています。

 

しかし、米国、英国、スイス、カナダなど、高学歴のトルコ人が多い国々では、AKP/エルドアンの得票率はかなり低くなっています。

 

ドイツ国内に住む外国人トップ10>

トルコは男性(青)777千人、女性(赤)710千人で、ダントツの1位です。

 ①トルコ、②ウクライナ、③シリア、④ルーマニア、⑤ポーランド
 ⑥イタリア、⑦クロアチア、⑧ブルガリア、⑨アフガニスタン、⑩ギリシャ

 

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