ハーグの国際司法裁判所(ICJ)がイスラエルにラファ攻撃即時停止暫定措置命令を発したことについてのドイツメディアの報道ぶりは以下の通り(イスラエルと特別な関係にあるドイツの苦悩がにじみ出ている):
- ICJはイスラエルに対し、攻撃を減らし、救援物資を増やすことでガザ地区のパレスチナ民間人の苦しみを軽減するよう繰り返し警告してきた。
- イスラエルは、本命令を不当なものとして拒否している。昨年10月7日のハマスの蛮行を考えると、この反応は理解できる。
- しかし、ICJはこの戦争において誰が被害者で誰が加害者であるかを判断しているわけではない。
- 国際人道法上、被害者とて正当防衛の範囲を逸脱すれば加害者になる可能性がある。本命令はその懸念への対応であり、それ以上でもそれ以下でもない。
- 多数のイスラエル人が双方の流血にうんざりしている。一人でも多くの人質を救出した上での平和を望んでいる。
- 国民の意に反してネタニヤフ政権が自らの存続のために強硬路線を続けているのに、イスラエルの議会や司法がそれを止められないということが大問題である。
- 本命令はイスラエル国民の反発を招き、かえってイスラエル右派強硬派の支持を高める恐れもある。
- 一つだけ確実なことは、パレスチナ人が生きる価値のある将来を否定されている限り、ハマスなどのテロ組織は根絶できないということ。
- 今回の紛争に対して、外から善悪を判断するのは極めて困難かつ危険。イスラエルが国連や国際司法からさらに遠ざかってしまう(軽視する)ことになりそう。
- ハマスの標的は民間人であるのに対し、イスラエル軍はあくまでハマスを標的としている。これは結果的な死者数に関わらず重要な違いである。
- ドイツはこれまで長年、ルールに基づく国際システムの最大のファンの1つであると自認してきた。
- しかしそれが有効なのは、それに伴うコストがかからない間だけであることが露呈しつつある。
- ICJはアフリカの専制君主を裁いている間は好都合だった。しかし、歴史的にも特別な意味を持つパートナーとしてのイスラエルに対して、大きなコストがかかる大変不都合なものになりつつある。
- 国際法廷のあるべき姿や、今回のハーグの判決がドイツにとって何を意味するのかについて、直ちにしっかり議論し始めなければならない。
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