日独経済日記

日独間の架け橋となることを目指しています

20240415 イランのイスラエル攻撃についてのドイツメディアの報道ぶり②

Ali Khamenei

イランによるイスラエル直接攻撃から一夜明けた本日(4/15)朝時点のドイツメディアの報道ぶり(当然ながら引き続きトップニュース)は以下の通りです。

  • イランはついにその仮面を脱いだ。ヒズボラハマス、フーシなどのテロ組織を利用する代理戦争から、自ら公然とイスラエルを直接攻撃するようになった。
  • 中東は新たな危険レベルに達した。今回この一線を超えたことは中東情勢にとって悪い意味で非常に大きい。
  • 中核的当事者達(イラン、イスラエル、米国など)は誰も事態のエスカレーションを望んでいないが、ヒスボラ、ハマス、フーシなどのイラン代理組織が(制御不能な形で)勢いづき、予測不能な暴挙に出るリスクが高まっている。
  • まだ機能している会話チャネルがあるので、それを最大限活用しながら事態の鎮静化に全力を尽くすべき。
  • イラン国民の大多数は戦争ではなく生活の改善を望んでおり、特にクルド人女性アミニさんの死去以降、イスラムによる暴力的支配の終焉への願いがひそかに高まっている。
  • ハメネイ師自身、イスラエルとの軍事的対立にはずっと消極的だったが、イスラエルによるシリア公館への攻撃で国内強硬派を抑えきれなくなり、やむなく今回の直接攻撃に打って出た。
  • イラン政府としては、イスラエル側の被害が限定的(負傷者2名のみ)であったことを本音では喜んでいるはず。体制の維持が最優先であり、報復措置でメンツを保ちつつも、西側との本格的軍事衝突は避けたいところ。
  • イスラエルが反撃する場合、核開発施設や革命防衛隊の重要拠点などへの非常に正確な攻撃(民間人には被害が出ないもの)か、ヒスボラなどイラン国外の代理組織への攻撃になる可能性が高い。
  • 世界で最も危険で複雑なこの中東紛争では、常に予測不確実性が高い。ネタニヤフ首相がどう反応するかが当面の最大のポイントになるが、一連のハマス対応で証明された通り、彼は全く慎重な男ではない。彼の政治的サバイバルのための圧力もエスカレーションの方向に作用する。
  • 西側諸国がイスラエルを支援することは確かに正しいことではあるが、ここから先の戦闘参加は、エスカレーションを加速するだけ。
  • 現時点でのネタニヤフ首相は、以下3点から非常に有利な立場にあり、少なくとも当面は慎重に反応する可能性が高い。
    イスラエル防衛システムがほぼ全てのミサイル/ドローン撃退に成功したこと。
    ②西側諸国や反イラン中東諸国をしっかり味方につけて対応できたこと。
    当初はやややり過ぎではないかと思われたシリア大使館攻撃/イラン軍事高官の殺害が、正当な作戦遂行だったように見えていること。
  • イスラエルは単独で自国を防衛したわけではなく、米、英、サウジ(給油等)、ヨルダン(空の解放だけでなく自ら撃墜にも参加)と協力して無人機やミサイルを撃墜した。
  • イスラエルと西側同盟国、友好的アラブ近隣諸国との関係は、ガザ民間人に対するイスラエルの冷徹な対応のため、劇的に冷え込んでいたが、本件をきっかけに改善するかも知れない。今後のガザ民間人保護が非常に重要。(イランはイスラエルではなく自らを孤立させてしまった、とも言われている)
  • イスラエルは米国の意見に耳を傾け、この機会にイランとハマスを孤立させ、サウジなどとの関係改善に努めるべき。
  •  西側諸国は、イランがプーチンのように他国を攻撃し、商船をハイジャックするようなことを許すべきではない。
  • 特にバイデン米国大統領は、自身が発するシグナルに注意する必要がある。彼が選挙前にイランとの戦争を望んでいないのは明らかだが、少なくとも制裁に関してはこれ以上譲歩すべきではない。
  • イスラエルの安全保障は(ユダヤ人大量虐殺という歴史的背景もあって)ドイツの存在意義そのものであり、今まさにドイツが挑戦を受けている。
  • 現在中国を訪問しているショルツ首相は、事態の鎮静化に向けて中国の協力を最大限引き出さなければならない。経済面で苦境にある中国がドイツに求める取引材料は少なくないはず。
  • 少なくとも比喩的な意味で、イランのミサイルはベルリンにも命中している。イラン政府の人権蹂躙に目をつぶり、甘い対応に終始してきたことをドイツ政府は大いに反省し「価値観に基づく外交」を徹底すべきである。
  • 他の西側諸国も同罪である。イラン国内の反体制派を支援するのではなく、制裁を緩和し、イラン政府と融和的に接してきた。不名誉なことに、米国とドイツはこのゲームを主導していた。
  • イラン政府が核武装を目指しているのは公然の秘密。イランの予見不可能性を​​考えると、核兵器開発阻止は西側諸国の最重要課題である。
  • イスラエルが200発程度の核兵器保有しているのに対し、イランはその開発の最終段階にあると言われている。イスラエルがこの機会にイランの核開発施設を破壊してしまいたいと考えてもおかしくない
  • 「イラン公館への攻撃は、イラン国土へのそのもの攻撃だ」というハメネイ師の主張は嘲笑に値する。45年前にテヘランの米国大使館を占拠したのは誰だったのかを都合よく忘れている。
  • 最近の金価格や原油価格の上昇は、今回のエスカレーションを正しく暗示していた。今後エネルギー価格急騰や世界経済減速という事態になれば、ただでさえ今苦しいドイツ経済は、ますます厳しい状況に追い込まれる。

 

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