◆FOMC議事録もデータも「higher for longer」をサポートする内容で、年内利下げ期待は1回半に後退。
◆2年国債金利は5%近くまで上がってきているが、株高やスプレッド縮小などのため、金融環境は利上げ開始前と同じくらい緩和的に戻っている。FEDも現行の金利が本当に充分引き締め的なのかを疑い始めている。
◆ウェートが大きい家関連のインフレはゆっくり下がってきそうなので、インフレが急上昇するリスクは低そう(実際ボラも低い)だが、万一急上昇して利下げ期待が死んでしまうようだと市場はかなり荒れそう。
◆キャリートレードとして引き続きクレジット商品は魅力的だが、割高なバリュエーション(低スプレッド)に注意(企業業績/ファンダメンタルズと需給/テクニカル的にはOK)。
◆社債の起債は引き続き活況(アリババCB45億ドルなど)ながら、夏休みに向けてサプライは夏枯れに向かう。一方で投資家の待機資金は潤沢(かつ高利回りで運用出来ている)。
◆HYのメディア/テレコム企業の中にデフォルトしそうな企業が出始めているが、市場を混乱させ、スプレッド全体がワイド化するような展開はまだまだ想定しづらい。
◆利下げ期待は一時の年内6回強から1回半に後退しているが、金利の悪影響以上に景気/業績好調、生成AI活用進捗(AIへの設備投資活発化⇒中長期的生産性向上も期待できる)で、一進一退ながらも株価は裾野の広がりを伴う上昇基調にある。
◆中国経済はまだ弱弱しいが、回復の兆しが見え始めている。GDP+4.7%のうち、自動化/デジタル化関連(製造業中心)が+3.3%pt、脱炭素関連(EV、太陽光など)が+1.7%ptプラス寄与しており、不動産業界からの▲1.4%pt押し下げ分を補っている。
◆AI活用やデータセンターなどの関連施設の急拡大で、電力需要の急増が見込まれている。小型モジュール炉原子力発電で個別供給するのが環境面でも合理的。技術的には確立しているが規制とコスト面が課題。
◆(米政府債務の膨張が問題になっているが)もし仮に流動性高く世界の金利のベンチマークになる米国債市場が存在しなかったら、金利の居所は分かりにくくなるし、金融政策も容易でなくなる。
◆債務残高の大きさ自体は、成長率(税収)が金利(利払い)を上回っている限り問題ではないが、金利を除いたプライマリーバランスが大きな赤字であることは大問題。
◆赤字の規模以上に、その赤字を政治的にマネージする能力や意思がないことが大問題。
◆国際比較上米国は税率がかなり低いので、経済成長を損なわずに税収を増やすことは十分可能なはず。
◆次期米大統領が誰になっても、そろそろ財政問題がトップイシューになるという悲観的見方もあるが、財政バランスが極端に悪い日本の例が示すように、(特に国内資金で賄われている限り)財政危機はそう簡単に勃発するものでもない。
◆トランプ政権2.0は1.0と全く異なる経済政策になりそう。移民受け入れに急ブレーキをかけ、金融政策に介入すれば経済はかなり混乱するはずで、不透明感が大きい。1.0の延長線上で考えてはいけない。
◆バイデン政権2.0なら、多少の増税と従来の延長線上のグリーン投資促進くらいで不透明感は小さい。
◆バイデン、トランプ共対中関税を切り上げようとしているが、バイデンが安全保障上の懸念が大きい品目にターゲットを絞っているのに対し、トランプは全品目を対象としたうえで、ゼロサムゲームとしての貿易赤字削減を目指している点が異なる。
◆中国は自国内需を拡大することなく、過剰生産能力を欧米市場への輸出に使おうとしているが、欧米諸国はそんなことを受け入れるわけがない。中国は次のアクションを求められる。
◆今年大学を卒業する人たちは、コロナのためリモート授業で大学に入った人たち。幸運を祈る。
<日独経済日記>