日独経済日記

日独間の架け橋となることを目指しています

20210811 約4%のドイツインフレ、いつまで一時的と言っていられるか

今朝ドイツ7月CPI確報が発表され、前年同月比+3.8%/前月比+0.9%と、7/29の速報から修正はありませんでしたが、当初市場予想を0.5~0.6%上回る非常に強いものであったことがコンファームされました。

【ドイツ連邦統計局のプレスリリース】

https://www.destatis.de/DE/Presse/Pressemitteilungen/2021/08/PD21_377_611.html

f:id:dateno:20210811194218p:plain

【市場予想との対比】

Germany Inflation Rate | 1950-2021 Data | 2022-2023 Forecast | Calendar | Historical (tradingeconomics.com)

 

以下二つの「一時的特殊要因」のため、ドイツのCPIは今年後半+5%程度まで上昇し、来年初から1%台前半にまで急低下する、というのがコンセンサスになっていますので、この程度のCPI上昇でドイツの長期金利は上昇していません。

【一時的特殊要因】~あわせて2%程度の押上げになっています。

①昨年7月から12月までは、付加価値税が19%から16%に軽減されていたので、今年の7~12月は、その反動でCPIが1%程度押しあがって見えている(フル転嫁だと1.6%ながら、6割程度の転嫁に留まっているというのが当地専門家の見立て)。

②コロナで昨年急落したエネルギー価格が今年は回復(前年比+10%超、ウェート約1割)している。7月CPI+3.8%も、エネルギ-除きでは前年同月比+2.9%「しか」上がっていないとプレスの中でも説明されている。

 

しかしドイツでは、今年は3%台後半、来年は+4%台前半と、潜在成長率(高く見積もって+1.5%)を大きく上回る経済成長が続く見込みです。その主役はコロナ期間中に積み上がった貯蓄の解放、つまりリベンジ消費です。

上記二つの一時的特殊要因による(前年同月比の)ベーシス効果があまり関係ない前月比でも7月CPIは+0.9%も上昇しています。このペ-スが今後顕著に落ちて来るようでないと、「一時的」では片付けられなくなり、来年以降も定着するインフレに化けてしまう可能性があります。

 

ドイツ連銀(BUBA)ヴァイトマン総裁は、ECBにおける孤高のタカ派として、就任当初から発言を割り引いて受け止められてしまっているのですが、直近のインタビューの中で「今後物価は持続的に上昇し、それに伴って金利も上がると思う」と言っています

https://www.bundesbank.de/de/presse/interviews/-unsolide-staatsfinanzen-sind-ein-risiko--873258

>Ich persönlich erwarte, dass sich der Preisauftrieb in den nächsten Jahren nachhaltig beschleunigen wird und wir dann auch höhere Zinsen sehen werden.

 

ちなみにドイツの家賃は+1.3~1.4%の上昇が安定的に続いています。日本と違って、ドイツの家賃はこれくらい毎年上がるのが当たり前です。賃金がそれ以上に(2%程度)上がり続けているので、普段は大きな問題にはならないのですが、足元は9/26の総選挙を前に、コロナ困窮者でも払えるような家賃の住宅が圧倒的に不足しているということが社会問題化しています。