掲題の大問題については誰も明確な答えを示しておらず、漠とした不安だけが膨らむ状況が続いているのですが、最近ドイツの主要メディア等で報じられている材料を集めて整理すると、ざっくりではありますが以下のような感じになると思います。
- EUのエネルギー供給の約1/4をガスが担っており、そのガスの約4割をロシアからの輸入に頼っている。
- 昨年ドイツのガス供給におけるロシアの割合は55%だったが、現在は35%。LNGの購入などを通じて年末には約30%、2024年夏までには10%までの押し下げを目指す(但し、ガスは運搬と貯蔵が難しいので短期的に代替が効きづらい)。
- 先日「ロシアの指示通りルーブル建てで決済しないから」とロシアにガス供給を止められたポーランドとブルガリアは、EUがロシアから輸入しているガスの8%程度とごく一部。恐らくEUに対する脅しに過ぎない。
- ロシア産の原油は他所で全く売れておらず、ここでガスを止めると収入源が全くなくなるので、自分の首を絞めることになる。ロシアがEU向けガス禁輸に踏み切るのは非常に難しそう。しかしプーチンは何をするかわからないので準備は必要。
- EU側もガス禁輸のダメージは大きいので、ロシア産のガスを制裁対象にはできない(原油を年内止めるのが精いっぱい)。
- ロシアのガスを止めれば、国際市場への供給が激減するので、価格は急騰する(青線)。一方、現状のような膠着状態が続くと、ガス価格は長期にわたって高止まるものの、さらに大きく上昇したりはしない(黒線)。
- 仮に今すぐロシアのガスが止まっても、幸い冬は超えているので暖房需要は低く、現在増強中の備蓄(ドイツでは貯蔵キャパの3割強まで積み上げ)で次の冬の手前くらいまでは耐えられる。
- ドイツ政府はいざという時、誰がどれくらいのガス供給を受けるかという緊急プランを策定している模様ながら、その内容は公開されて(決まって?)いない(従って、どこにどのような影響が出るかという分析も出回っていない)。
- 最も大きな悪影響を受けるのはドイツ産業界で、化学、金属、ガラス・セラミック、製紙などで特に影響が大きくなる見込み。ガス供給が半分以下に落ちると多くの生産プロセスが停止に追い込まれ、失業や時短が大量に発生する。
- ドイツGDPは、黒線のようにベースライン(青線)比(特に来年になってから)大きく落ち込むイメージ。
- インフレは黒線のようにさらに大きく押し上げられるので、経済全体としてはスタグフレーション色が一層濃くなる。